第13回大会

ポスター発表について

(1)ポスター発表   10:00~12:00 (図書館2階)
学校心理学に関連する調査研究・実践研究などを発表していただきます。
今回の発表数は計56本です。とても多くの発表が集まりました。

在席責任時間・・・・奇数番号:10:00~10:30   偶数番号:10:40~11:10
グループ別セッション:11:15~11:45
グループ内発表者が相互に情報交換を行う時間です。セッションは、大会協力員が進行します。一人2分以内(質疑を含む)で順番に発表してください。

【Aグループ】(心理教育・対人関係)

A1
横張亜希子(埼玉県立三郷高校)・飯田順子(東京成徳大学)
高校における心理教育プログラムの実践

高校において退学防止プログラムの一環としてアドベンチャー教育やソーシャルスキルトレーニングなどを組み合わせた1年間の心理教育プログラムの実践を行っている。事前事後に行ったアンケート調査の結果を基に,実践およびその効果について報告する。

A2
篠原尚人(茨城県日立市立塙山小学校)・松本真理子(名古屋大学)
小学生の対人関係ビリーフに関する研究
-対人関係ビリーフ尺度の開発-

学校不適応を起こす可能性のある小学生の対人関係ビリーフをSCT質問紙によって収集し、小学生の対人関係ビリーフ尺度の作成を行った。発表では、SCTによるデータ収集、予備調査、本調査の結果について詳しく述べたい。特に因子分析の結果からどのような因子構造になったのか、本調査の結果から小学生の対人関係ビリーフにはどのような特徴があるかについて考察したことを述べたい。

A3
深澤大地(富山県総合教育センター)・網功治(射水市立片口小学校)・大阪正也(黒部市立高志野中学校)・福田有児(富山県総合教育センター)・石津憲一郎(富山大学人間発達科学部)・沢崎達夫(目白大学人間学部)
小学校低学年を対象にしたアサーション・トレーニング
学級担任が実施できるプログラムの作成と効果検証

小学校低学年を対象としたアサーション・トレーニングの効果研究は数少ない。そこで、本研究では、小学校低学年を対象に、学級担任の指導によるアサーション・トレーニングを全4回のプログラムで作成した。また、効果を測定するためのアサーション尺度、自己肯定感尺度を作成し、アサーション・トレーニングの効果を検証した。全4回の実践を行ったところ、自己主張、他者尊重、自己肯定感が有意に変化した。

A4
石津憲一郎(富山大学人間発達科学部)・下田芳幸(富山大学人間発達科学部)
日本語版Emotion Awareness Questionnaire作成の試み

感情を抑圧したり感情に圧倒されれば,人は不適応に陥る可能性がある。本研究では子どもの感情を知覚するための尺度(Emotion Awareness Questionnaire:EAQ)の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検討した。その結果,原版とほぼ同様の6因子(「情動の分析」「情動の識別」「身体的知覚の低さ」「情動の共有」「非隠ぺい性」「情動の言語化」)から構成される尺度が作成された。

A5
小野藤子(筑波大学)・中尾正寿(筑波大学)
小学生の感謝認知に関する検討

小野・中尾・大塚(2011)は、人や状況に対して感謝したり、ありがたいと思うことを「感謝認知」と定義し、調 査研究による世代間比較を行った。因子分析の結果、高校生・成人前期と小学生とでは、因子構造が異なることが明らかになり、感謝認知が発達とともに変化する可能性が示された。そこで本研究では、小学生の感謝認知に関する検討を行った。

A6
坪井裕子(人間環境大学)・鈴木伸子(愛知教育大学)・野村あすか(名古屋大学)・丸山圭子(名古屋大学)・蒔田玲子(名古屋大学)・山本明日香(名古屋大学)・大久保諒(名古屋大学)・畠垣智恵(静岡大学)・松本真理子(名古屋大学)・森田美弥子(名古屋大学)
児童福祉施設における子どもの対人交渉方略の特徴
―場面による検討―

近年、児童福祉施設には虐待をうけた多くの子どもたちが入所するようになり、対人関係のトラブルが問題となっている。そこで本研究では、児童福祉施設に入所している子どもたちが、葛藤場面においてどのような対人交渉方略を用いる傾向があるのかを明らかにすることを目的とした調査研究を行った。その結果を検討することで、子どもたちの対人関係改善の方策を考える第一歩としたい。

A7
鈴木伸子(愛知教育大学)・坪井裕子(人間環境大学)・野村あすか(名古屋大学)・丸山圭子(名古屋大学)・蒔田玲子(名古屋大学)・山本明日香(名古屋大学)・大久保諒(名古屋大学)・畠垣智恵(静岡大学)・松本真理子(名古屋大学)・森田美弥子(名古屋大学)
日本とフィンランドの子どもにおける対人交渉方略の発達

われわれは2003年よりフィンランドの子どもと日本の子どものメンタルヘルスと子どもを取り巻く環境の比較調査を通して,現代の日本に生きる子どもたちのメンタルヘルスの実態とその支援のあり方に関する一連の研究を行っている。本発表では,学校でよく見られる葛藤場面における対人交渉方略について,両国の子どもの,①場面の問題定義,②自己認知する解決方略に焦点をあて,性差および発達的観点から比較検討し,報告する。

A8
岩月美智子 (愛知県立御津高等学校)
心の学習会2011
-絵葉書フォーカシング・ミラーリング-

「心の学習会」は高等学校における、生徒同士が困ったときに支援しあう仲間作りの会である。5年前に紹介したこの会は、2011の今も現場で実施できている。サブリーダーが撮影した写真とともに、継続して育んでいる小さな会を、皆さんにご覧いただきたいと思う。雑誌「月刊学校教育相談」2009・5~10の、その後の部分である。今の高校生の姿、学校相談室のひとつの姿がなんらかのヒントとして、お役にたてれば嬉しい。

A9
網美智代(富山県教育委員会スポーツ・保健課)
中学生期、かけがえのない人生を支援する
~養護教諭として多面的な実践を試みる~

学校心理学の考えに基づく三段階の援助の実践を振り返り、いのちの教育を充実させていくための養護教諭の役割について考えた。
今後の課題としては、援助チームのコンサルテーションの時間や行事的活動にあてる時間をいかに確保していくか、学校保健年間指導計画への位置づけ方を工夫するとともにコーディネーターとして効果的な話し合いの場を設定する方法を探りたい。

【Bグループ】(援助要請行動・QOL)

B1
水野治久(大阪教育大学)・山口豊一(跡見学園女子大学)
中学生へのスクールカウンセラーに対する被援助志向性への介入の試み

中学生124名を対象に,スクールカウンセラーに対する被援助志向性を高め,落ち込みに対する認識を肯定的にすることを目的とした50分の介入プログラムを実施した。その結果,スクールカウンセラーの被援助志向性の1因子である「援助に対する懸念・抵抗感得点」が有意に低くなった。更に,落ち込みに対する否定的認識の「忍耐不足得点」,「努力不足得点」が有意に低下した。

B2
櫻井由史(東京成徳大学学生相談室)・田村節子(東京成徳大学)
スクールカウンセラーに対する中学生の援助不安に関する質的研究
―相談したくてもできない生徒への援助に焦点をあてて―

本研究の目的は,①スクールカウンセラーに相談したくてもできない中学生の援助不安の種類を明らかにすること,②援助不安に適合した援助サービスを提供できるシステムを提案することである。研究Iでは,725名を対象に自由記述調査を実施した。研究IIでは,9名を対象に半構造化面接を実施した。分析結果から,相談したくてもできない中学生の援助ニーズに適合した,心理教育的援助サービスを提供する際の指針が考察された。

B3
近藤昭子(子ども家庭支援センター麦の穂/長野県スクールカウンセラー)
中学生のスクールカウンセラーへの相談行動の規定因
自我関与、イメージ、相談行動観との関連から

中学生のSCへの相談行動を、自我関与・イメージ・相談行動観(「他者へ相談するかしないかの判断の基準となる、個人の相談行動に対する観念、相談行動に対する心的内容を作っている要素」と定義)との関連から捉える研究を行った。その結果、中学生のSCへの相談行動を促すためには、①SCの親近イメージ、②相談への関わり・経験、③相談への興味・関心を促進させる取り組みが重要であることが示された。

B4
相樂直子(筑波大学附属高校)・石隈利紀(筑波大学)
中学生は問題へ取り組む際どのように資源を活用しているのだろうか

中学生の問題への取り組みついて、中学1~3年生を対象に半構造化面接を行い、修正版グラウンデット・セオリー・アプローチにより分析を行った。その結果、問題への取り組みのステップに応じて、援助資源および自助資源の活用がなされていることが明らかになった。中学生の発達段階を考慮して、資源の活用を促進することが重要であることが示唆された。

B5
板垣市子 (山形県スクールカウンセラー)・石隈利紀(筑波大学)
生徒が感じた中学校教師による過剰な援助に関する研究
-生徒の認知,感情・行動,それらを経験した結果から-

中学生が「教師による過剰な援助を受けた」と感じた時と「教師からまかされた」と感じた時に,どのような認知,感情・行動を示しそれらが続けられた結果,どのように生徒自身に影響を与えたかについて検討をすることを目的とした。その結果,「過剰な援助」は,「反発と従属」を高め教師への「不信や依存」に繋がった。「まかされた」時は,「実現への工夫」が生徒の「自信」と学校生活の「意欲」に影響を与えることが分かった。

B6
倉橋佳那(跡見学園女子大学大学院)・伊藤花奈(跡見学園女子大学大学院)・山口豊一(跡見学園女子大学)
相談室登校生徒にとっての相談室という場の機能

本研究では、「相談室という場が相談室登校生徒にとってどのような機能を持つのか」ということについて仮説的な機能モデルを生成することを目的とし、2校の公立中学校にて、積極的な参与者の立場をとりながらフィールドワークを行った。分析方法としては、グラウンデッド・セオリー・アプローチを援用、また、質的コーディングの手法およびKJ法を採用し、フィールドノーツから得られた108の質的コードから、11のカテゴリーと20の下位カテゴリーを析出した。また、11のカテゴリーは、相談室の機能の内容によって、<成長促進機能><保護・受容機能><学校・学級への橋渡し機能>の3つに大別され、生徒にとっての相談室の意義について考察した。

B7
蒔田玲子(名古屋大学)・丸山圭子(名古屋大学)・山本明日香(名古屋大学)・坪井裕子(人間環境大学)・鈴木伸子(愛知教育大学)・野村あすか(名古屋大学)・大久保諒(名古屋大学)・畠垣智恵(静岡大学)・松本真理子(名古屋大学)・森田美弥子(名古屋大学)
日本とフィンランドの子どもにおける学校環境とQOL
-小学校中学年を対象に-

われわれは数年前より日本とフィンランドの学校環境(物理的・人的環境、メンタルヘルス支援のシステムなど)と子どものQOLに関する現地観察調査および質問紙・投影法による調査を行っている。現地調査の一部は昨年の本学会でも発表したが、今回は小学校4年生児童の学校生活に関する観察とQOL質問紙による2国間比較の結果を報告し、学校環境が子どものQOLに及ぼす影響と日本の学校環境の特徴について検討する。

B8
丸山圭子(名古屋大学)・山本明日香(名古屋大学)・蒔田玲子(名古屋大学)・坪井裕子(人間環境大学)・鈴木伸子(愛知教育大学)・野村あすか(名古屋大学)・大久保諒(名古屋大学)・畠垣智恵(静岡大学)・松本真理子(名古屋大学)・森田美弥子(名古屋大学)
日本とフィンランドの子どもにおける学校環境とQOL
-中学生を対象に-

本発表では日本とフィンランドにおける中学生の学校生活に関する観察とQOL質問紙による2国間比較の結果を通して、学校環境が子どものQOLに及ぼす影響と日本の学校環境の特徴について報告する。また、連題発表による小学生の2国間比較の結果を含めて、発達的視点から見た場合の2国間の特徴や、子どもにとっての小学校と中学校という学校環境のもつ意味の2国間比較についても検討したい。

B9
大久保諒(名古屋大学)・坪井裕子(人間環境大学)・鈴木伸子(愛知教育大学)・丸山圭子(名古屋大学)・蒔田玲子(名古屋大学)・野村あすか(名古屋大学)・山本明日香(名古屋大学)・畠垣智恵(静岡大学)・松本真理子(名古屋大学)・森田美弥子(名古屋大学)
日本とフィンランドの子どもにおける学校生活のQOL

われわれは2003年より、フィンランドの子どもと日本の子どものメンタルヘルスと子どもを取り巻く環境の比較調査を通して、現代の日本を生きる子どもたちのメンタルヘルスの実態とその支援のあり方に関する一連の研究を行っている。その一環としてKINDLの学校生活領域4項目を用い、両国における学校生活のQOLに関する測定を試みた。本発表では、1)文化、2)性別、3)学年、の観点から各項目得点を統計的に比較検討した結果を報告する。

【Cグループ】(不登校・危機介入)

C1
野村あすか(名古屋大学)・坪井裕子(人間環境大学)・鈴木伸子(愛知教育大学)・丸山圭子(名古屋大学)・蒔田玲子(名古屋大学)・山本明日香(名古屋大学)・大久保諒(名古屋大学)・畠垣智恵(静岡大学)・松本真理子(名古屋大学)・森田美弥子(名古屋大学)
ひきこもり傾向児の学校における自己像および対人関係の特徴
―文章完成法を通して―

質問紙によって抽出した小・中学生のひきこもり傾向児における,自己像および友人,教師や家族との関係の特徴について,文章完成法を通して検討した。その結果,ひきこもり傾向児は対照群に比して,学校における自己を否定的に捉え,いじめ被害や孤立傾向を示唆する記述が多く認められた。また友人関係については,関係の回避や友人からの拒否,対教師関係では,かかわりの希薄さを示唆するなど特徴的な記述が認められた。

C2
矢嶋千文(長野県長野高等学校)・眞榮城和美(清泉女学院大学)
不登校現状とその要因の検証
-統計分析から見える不登校促進/抑制モデル-

本研究の目的は、「不登校要因」の探索と、その背景に潜む「不登校の現状」を統計分析により明らかにすることである。総務省、文部科学省の公表データ(「学校基本調査」、「統計で見る都道府県のすがた」他)を用いて、都道府県別不登校および長期欠席出現率に影響を与える要因を「家族」、「学校」、「地域」に大別し検証を行った。本研究により「不登校促進/抑制モデル」が導かれ、「学校基本調査」の問題点も明らかとなった。

C3
折笠国康(筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科)・庄司一子(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
中学生の学校ストレスが学校忌避的感情と関係性攻撃に及ぼす影響

中学生の認知する学校ストレスの種類を因子分析によって抽出する。そこから得られた因子の違いによる、不登校やうつの原因とされる学校忌避的感情や関係性攻撃などのストレス反応に与える影響について、重回帰分析による検討を行う。

C4
神尾敦男(飯田市立龍江小学校)
新たな不登校児童をつくらないための支援
~市街地大規模小学校での実践から~

小学校で不登校の児童をなくすためには、不登校になってしまった児童の学校に復帰させるための支援は勿論重要だが、それだけでなく「新たな不登校を出さない」ことに重点をおいた未然防止の手立てが重要であると考え教頭として長野県内の市街地大規模小学校で取り組んだ3年間の実践を紹介する。毎年度4~5人いた不登校児童が4年目0人になった要因を考察していく。

C5
平山勝行(福岡教育大学教職大学院生徒指導・教育相談リーダーコース)・納富恵子(福岡教育大学大学院教育学研究科)
「不登校の組織的な予防をめざす、小中連携を生かしたアプローチの在り方」
-小・中引き継ぎにおける「基礎的情報」を載せた児童個票の共有を通して-

小規模小学校の不登校児童の中学校での不登校を予防するために、基礎的情報を載せた児童個票を用い、6年生の3月実施の小中連絡会で情報交換を行う組織的な取組を行った。個票対象児は、欠席状況等の条件からスクリーニングを行い決定した。小中連絡会では、個票対象児の情報交換の時間を確保し、情報を的確に中学校へ伝えた。対象児が中学校に入学後は、出席状況等の変容を毎月1回の小中生徒指導部会で情報交換を行う。発表では、取り組んだ成果と課題及び対象児の追跡調査の結果も報告する。

C6
藤原正光(文教大学教育学部)・山口彩由香(坂戸市立保育所)
移行対象が子どもに与える心理的効果の研究
子どもの毛布やぬいぐるみへの愛着と保護者の影響について

私立幼稚園児92名を対象に、「毛布やぬいぐるみへの愛着」に関する聞き取り調査を実施した。園児は、移行対象に、肌ざわりの良さ、可愛らしい表情、に魅力を感じ、心のよりどころとしている。また、保護者自身が移行対象に愛着を持った経験者ほど、子どもへの移行対象を受容する度合いが高いことが示された。

C7
茅野理恵(長野県スクールカウンセラー)・庄司一子(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
喪失体験をした子どもに対応した教師の不安とサポート希求

喪失体験をした児童生徒に実際に対応した教師の感じた不安や戸惑いの内容と対応の際に教師自身が必要だと感じたサポートの内容について検討した。

C8
大島寛美 (茨城県筑西市立大田小学校)
児童が元気に学校生活を送るための支援の在り方
保健室からの働きかけを通して

3月に起きた東日本大震災後の子ども達の心のケアを通し,心身の健康観察や情報収集を図り,問題の背景を分析した。また,学級担任と連携し小学6年生34名を対象としたSSTによる教育的支援を行った。「元気を与え合う言葉掛けの仕方」「友達関係のスキル」など養護教諭の視点から予防的支援を追求する。

C9
森山賢一(玉川大学教育学部)・柏賴英(常磐大学人間科学部)
関係力・発見力・実現力を育てる生徒指導(1)
-危機感の共有・責任の共有・希望の共有-

2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の巨大地震、関東、東北の太平洋沿岸にもたらした未曾有の被害。道路、交通機関、電気、水道などのライフラインに被害発生。この非常事態に多くの命を預かっている学校は即座にどう判断し、決断し、行動すべきかについて学校の真価が問われる。これらのことを念頭に下記3点を軸に発表したい。
1.危機感の共有(1)報告(2)連絡 (3)相談(4)確認の生活化
2.責任の共有(1)想定外の配慮 (2)マニュアルの弾力化
3.その他 希望の共有
4.まとめ(主題に迫る)

C10
柏賴英(常磐大学人間科学部)・森山賢一(玉川大学教育学部)
関係力・発見力・実現力を育てる生徒指導(2)
-地球規模で考え、足元から行動する-

2011年3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災から2ヶ月を迎えた5月11日現在、死者1万4949人(内2193人の身元が判明していない)、行方不明者9880人、避難者11万7085人、今も余震がきて傷痕がさらに深くなっている。  震災は不幸な出来事であったが、一方では関係力・発見力・実現力が育つ要を多面的、多角的に実感できた。これらのことを念頭に下記の3点を軸に発表したい。
1.震災が育んだ関係力・発見力・実現力。
2. 震災ボランティアの活躍。
3. 地球規模で考え、足元から行動する。
4.まとめ(主題に迫る)

【Dグループ】(特別支援・指導法)

D1
本多聡子(公立小学校教諭)
自閉症児が就学時から安心して学校生活を送るための支援のあり方
~それぞれの障害の特性に合わせ、児童に寄り添う援助を通して~

自閉症児に寄り添いながら就学支援を行い、入学後も安心して学校生活を送ることができた事例。①障害に応じたアセスメントを行い、その特性に寄り添う。②役割的ヘルパーの機能が向上できるように保護者に寄り添う。③SSTやSGEを取り入れ、人とかかわるスキルを身に付けたり楽しんだりできるようにする。④児童の「資源」を生かした「自立活動」を仕組む。このような援助を効果的に行った事例を報告する。

D2
福島順子(国分寺市教育委員会)
アメリカ合衆国の小学校における個別教育

欧米では、学習障害と診断された子どもの80%がディスレクシア(発達性読み書き障害)である。本稿では、米国テキサス州の小学校において、学習障害の一つのタイプであるディスレクシア児童の個別指導について報告する。

D3
向田憲生(神奈川県立保土ケ谷養護学校)
特別支援学校高等部生徒の電卓を活用した数学学習の援助に関する一考察(1)
四則計算を学習課題として

特別支援学校(知的障害領域)に在籍する高等部生徒の個別指導計画を作成する際、保護者より電卓を活用した計算の学習についての要望があった。生徒の学力等を考えて学習援助を行った結果、数学の学習に対する興味・関心の高まり、集中力の高まりがみられた。また基礎的な計算の知識が身に付き、数学学習に対する自己効力感が高まった。これらを通して、知的障害をもつ高校生が数学学習に取り組む様子とその結果について報告する。

D4
湯浅俊夫(横浜市スクールカウンセラー・一橋大学非常勤講師)
大学生の「書くのが苦手」意識の要因をさぐり、書く力を伸ばす技術を開発する

学生たちはなぜ「書くのが苦手」なのか。苦手意識の内実はいかなるものなのか。その要因をつきとめ、学生たちが喜んで書き、考える力を伸ばす技術を開発する。さらに、書くことが書き手になにをもたらすのかを研究する。

D5
田中裕子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・鈴木未知世(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・小倉正義(鳴門教育大学)・神谷範子(知立市心の相談員)・飯田愛(共和病院)・岡田香織(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・福元理英(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・畠垣智恵(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・野邑健二(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
特別支援教育における心理士の専門性の在り方の検討(6)
~特別支援相談室『にじいろ教室』の実践を通して~

名古屋大学発達心理精神科学教育研究センターでは、軽度発達障害分野における治療教育的支援事業の一環として、A県B市C小学校に特別支援相談室『にじいろ教室』を設置し、学習困難などの発達に関する相談や学習支援、コンサルテーション等の相談事業を展開している。本研究では、平成20年度に開室してからの活動を報告するとともに、特別支援教育の中で心理士が担える役割や、その専門性をいかすシステムについて考察する。

D6
伊東知江子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・田村生恵(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・飯田愛(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・鈴木未知世(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・田中裕子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・岡田香織(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・福元理英(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・畠垣智恵(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・野邑建二(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
特別支援教育における心理士の専門性のあり方の検討(7)
書字グループの実践と報告

軽度発達障分野における治療教育的支援事業の一環として、書字学習に困難をきたしている児童を対象にグループ支援を行い、その有用性について検討した。書字につまずきのある児童2学年4人のグループを構成し、文字の読み書きに特化した学習支援を実施した、本研究では、小学校におけるグループ学習支援の実践報告と効果、それぞれの児童の変化について検討、考察した。

D7
神谷範子(知立市心の相談員)・田中裕子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・鈴木未知世(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・福元理英(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・畠垣智恵(静岡大学)・野邑健二(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
特別支援教育における心理士の専門性の在り方の検討(8)
~小学校2年生女児への学習支援の経過をもとに~

特別支援教育における心理士の役割には, 学習に困難さを抱える子どもの知的能力のアセスメントや,支援方法についての提案がある。しかし,WISC-IIIなどの知能検査から得られる情報のみをもとに,実際の教育現場で活用できる支援方法を提案することは難しい。本事例では,推論能力に苦手さが見られた小学校2年生女児への学習支援の経過をもとに,特別支援教育において,心理士が果たすことができる役割について検討する。

D8
人見美沙子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・伊東知江子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・田中裕子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・福元理英(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)・畠垣智恵(静岡大学)・野邑健二(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
特別支援教育における心理士の専門性の在り方の検討(9)
~学習困難児の個別学習支援における情緒的側面への効果の一考察~

文字が読めなかったり、書けなかったり、計算ができなかったりと学習に困難を抱える児童は、苦手意識から自信をなくしてしまうことも多く、早期支援が必要である。学習に対して特別なニーズを持つ子どもたちに、我々は心理士という立場から学習支援を行っており、支援前後の児童の姿を、描画テスト等を通して把握する試みを行っている。今回は、児童の情緒的特徴や支援前後での変化について、バウムテストを通して検討した。

【Eグループ】(連携)

E1
伊尻正一(東日本国際大学)・仁科光一(東京都東村山市立秋津小学校)
教師の保護者認知に関する研究
3人の教師用RCRTの結果から

本研究は、教師用RCRTの結果から教師の保護者認知の特徴を知ることを目指している。教職年数の異なった小学校教諭に教師用RCRTを対保護者と対児童それぞれ実施し、フィードバック面接を行った結果、教職年数による認知構造の違いが示された。

E2
野元寛子(青木村立青木小学校)・上村惠津子(信州大学教育学部附属教育実践総合センター)
教師に対する保護者の印象について
教師のリーダーシップ類型からのアプローチ

子供に対するどのような教師のリーダーシップが,教師に対する保護者の良い印象を高めるのか検討することを目的とした。PM理論に基づくリーダーシップ尺度,印象測定尺度,教師に対する保護者の期待を尋ねる質問項目を,保護者に回答してもらい,次の二点を検証した。①教師に対する保護者の印象は,PM型>M型>P型>pm型の順に良い。②教師への保護者の期待とリーダーシップ類型と印象の関係について,探索的に検討する。

E3
飯田順子(東京成徳大学)
保護者の要望を生かした学校づくりに関する取り組み
~フィールドスタディを通して

保護者の要望を生かした学校づくりをすすめている小学校の実践を報告する。フィールドスタディのなかで行った教職員の面接や観察記録を基に,その取組を報告する。

E4
島田直子(筑波大学保健管理センター)
アメリカのスクールサイコロジストの試み
ニーズの高い小学校でのインターンの経験から

複数の学校を掛け持ちで心理サービスを行うスクールサイコロジストが、毎日子どもたちと接している先生方とどのように安定した協力体制を築いていくか。行動分析学的手法(Behavioral Plan)を軸に、複数の子どもたちの個別のニーズに対応しながら、介入効果のモニタリングを行い、教師や保護者との連携体制を築いていく。米国での着任1年目のスクールサイコロジストの試みの一例について実践報告する。

E5
忍田とし子(常総市立菅生小学校)
養護教諭が特別支援教育コーディネーターとして行う発達障害が疑われる児童への支援
普通学級と特別支援学級の連携と母親への支援を通して

A男は普通学級に在籍しているが、発達障害が疑われ小学校入学当初から介助補助員がついていた。2年生になり、教室を飛び出すことが多くなり、保健室を逃げ場所とするようになった。養護教諭は特別支援教育コーディネーターを兼ねていたので、担任と特別支援学級担任のコーディネーションを行い、母親のカウンセリングを重ね、算数と国語の時間を特別支援学級で行うことにより、次第に落ち着いた学校生活を送るようになった事例。

E6
山本智子(皇學館大学教育学部)
特別支援教育と保護者をつなぐ後方支援

障害児の両親等が,子ども達のよりよい発達を願って開催する自主学習会の場では,学校に対する心情を吐露することが多い。親自身が経験のない特別支援教育について,戸惑いや不安を抱いていることがわかる。このような学校⇔保護者間で生じる「ズレ」に焦点をあて、学校システムや教師の言葉の意味,子どもの状態像の解釈の仕方等について適切にアドバイスすると,担任への理解の深まりや養育態度に変化がみられることがわかった。

E7
中村健 (プール学院大学)・ 宋知潤 (プール学院大学)
保護者の障害受容にソーシャルサポートが及ぼす影響
~家庭児童相談員による発達障害児の実践事例を中心に~

保護者が発達障害児を養育していく際、障害受容するプロセスでの葛藤は生じやすく、そのストレスはとりわけ大きいと言える。またこのことは教師をはじめ保護者を支援する者にとって大きな課題でもある。本研究では、家庭児童相談室における実践事例からソーシャルサポート(特に情緒的サポート)が障害受容におけるストレス軽減に有用性があるのかを検証するとともに、学校や関係機関における保護者サポートに役立てたい。

E8
瀬戸美奈子(関西福祉科学大学)
大学生に対するチーム援助実習の試み
-教師・保護者・スクールカウンセラーによる援助チームに焦点をあてて-

臨床心理学専攻の学生に対して行ったロールプレイを用いたチーム援助実習の取り組みについて報告し、実習後の振り返りをもとに、チーム援助実習の有効性について検討した。
担任と保護者との連携に難しさを感じる学生が多く、協力関係構築のためには①保護者に対する事実の伝え方の配慮、②保護者の立場の尊重、③仲介となる役割の存在が重要であることが示唆された。

【Fグループ】(教師支援)

F1
森下文(奈良女子大学大学院人間文化研究科)・山本智子(皇學館大学教育学部)
一人一人の教師を支援し,学校資源の活性化をはかる取り組み
~A私立中学校における組織的教育支援体制への移行

A中学は、教育支援室を新設。担当者は、教師の超多忙と疲弊を知り、日常の時間の流れの中で,「ちょっとちょっと」教師への個別のコンサルテーションを重ねた。これは、会議や研修と異なり,本音を引き出しやすく,信頼関係も築きやすかった。各教師を労いながら、生徒の支援プランを提案し、校内の連携をコーディネートすると、生徒の問題は解決に向かい、各教師が持ち味を発揮し、協働して支援を行う体制が浸透していった。

F2
樽木靖夫(帝京科学大学)
学年教師コミュニティ活性化プロセスモデルの提案
-学年劇活動の実践に焦点をあてて-

中学校での学年教師コミュニティ活性化プロセスについて、学年劇活動の実践により検討した。その結果、①中心的に活動するコアグループは学年生徒の課題を捉えたプランを創発できた。②活動するアクティブグループとコアグループの間で、学年生徒の課題の捉え方が共有できた。③コアグループとアクティブグループで主体的にプランを決めて実践できた。④その背景には、創発的協同的な相互作用がみられた。

F3
都丸けい子(平成国際大学)
養護教諭のストレッサーについての研究
「教職員のストレスチェッカー」を用いて

子どもと直接かかわり,影響を与える存在として,教師のストレスと同様に,養護教諭のストレスもまた看過できないものである.「ストレスチェッカー」は,教職員の職業ストレッサーとバーンアウトの関係を中心に開発された心の県高度チェックシステムである.本研究では,「ストレスチェッカー」を用い,小・中・高校・養護学校の養護教諭163名を対象に,ストレッサーについて検討を行った.

F4
谷島弘仁(文教大学人間科学部)
教師が学校コンサルタントに求める援助特性とストレス・コーピングの関係

教師が学校コンサルタントに対して求めるコンサルテーションの援助特性と、小学校および中学校の教師のストレス・コーピングの関係について検討する。

F5
石上浩美(奈良女子大学大学院人間文化研究科)
教員の熟達支援モデル形成に関する研究(1)
若手教員を対象としたインタビュー調査から

本研究の目的は,職務体験の中から生成する教員の学びの特性を明らかにし,それをふまえた教員の自己形成を促進するための外的支援モデルを開発することである。教員は,日々の職務上の葛藤・困難や社会的関係性の中で体験をふり返り,省察しながら学んでいるが,これは研修等で習得される学習とは異なり体験の内化プロセスで生成すると考えられる。本発表では若手教員の数量データを基に,教員の熟達支援のあり方を考えてみたい。

F6
仁科光一 (東村山市立秋津小学校)・伊尻正一(東日本国際大学福祉環境学部)
教師用RCRTの活用
個別の指導方針と学級経営の見直し

日常的に指導している子供たちを「どのように見ているか」という認知の視点や枠組みを教師自身が客観的に知る機会は少ない。そこで、現職の小学校教員に教師用RCRTを実施し、専門家が認知の因子を分析した上で、個々の児童に対する認知の位置付けを認知図に表してカウンセリングを行った。そして、それをもとに小学校教員が個別の指導方針を見直すと共に学級経営を見直し、指導を改善した事例研究として発表を行う。

F7
原伸生(長野県小諸養護学校)
特別支援学校における自立活動専任教諭によるコンサルテーションの取り組み
授業参加が困難だった自閉症のある生徒への支援を例に

立ち歩き、注目獲得等の不適応行動が多く、授業に参加できず苦戦していた自閉症のある生徒の問題状況を解決するために、自立活動専任教諭が担任へのコンサルテーションを行った。問題状況は対象生徒と環境との相互作用から生じるという観点でアセスメントを行い、実行可能な支援案を提案した。また、データやエピソードを用いチームの支援を評価した。その結果、担任は支援方法を工夫し、対象生徒は授業に参加するようになった。

【Gグループ】(学級集団)

G1
三島美砂(神戸学院大学)・淵上克義(岡山大学大学院教育学研究科)
学級集団に及ぼす教師の影響過程に関する研究
―教師の性差に着目して―

本研究では学級集団に対する担任教師の影響過程を教師の性差に着目して明らかにしていく。具体的には、男性教師、女性教師に分け、次のような分析を行う。学級集団に対して教育信念、勢力資源、指導行動がどのように影響を及ぼしているのかをパス解析にて分析する。

G2
四辻伸吾(河内長野市立南花台東小学校)・水野治久(大阪教育大学)
意見発表促進活動が児童のスクール・モラールに及ぼす影響

国語科において,物語文や説明文などの一文一文について自分なりの意見や感想をノートに書き込み,それについて発表をしていく「ひとり読み」活動に取り組み,授業時間内に一人一回は必ず意見を発表させた。その結果,「ひとり読み」に取り組んだA学級の児童において,スクール・モラールの<級友との関係>,<学習意欲>が取り組み前に比べて有意に高まった。

G3
藤原則之(松戸市立栗ヶ沢中学校)・蘭千壽(千葉大学)・樽木靖夫(帝京科学大学)
部活動モラールに及ぼす部活動顧問教師の指導行動についての検討

①PM式教師のリーダーシップ行動②教師の手続き的公正感③教師の分配的公正感④生徒の部活動満足モラール⑤生徒の意欲・動機づけモラールの5つの測定尺度を用いて,顧問の部活動集団への「リーダーシップ」や「公正感」の関わりが,部活動集団への「モラール」にどのような影響を与えるかを明らかにした。その結果,「部活動満足モラール」「意欲・動機づけモラール」ともに、「公正感」の影響を強く受けた。

G4
石塚浩司(茨城県県西教育事務所)・永島裕可(古河市立下大野小学校)・鳥巣敦子(古河市立下大野小学校)・沼田協子(古河市立下大野小学校)
児童の学校生活適応のための指導援助の在り方
社会的スキルの習得と活用による望ましい集団の形成を通して

社会的スキルの習得と活用を通して児童の学校不適応の解消や生徒指導上の諸問題の未然防止に取り組んだ。社会的スキルの習得では養護教諭や特別支援学級担当との連携による児童のスキル習得のつまずきへの対応,社会的スキルの活用では異年齢集団による活動を通して,望ましい集団の構成要素である友達関係に関する認知,学習活動に関する認知,学級の雰囲気に関する認知がどのように変容したかを考察する。

G5
池谷航介 (大阪教育大学大学院研究科)
通常の学級における児童同士の相互援助
個々の課題を学級集団の資源として捉え直す試み

小学校教諭として実践を進める中で、児童が個々に有している課題を学級全体に活かせないかという視点で捉え直すことができれば、集団や特定の児童を援助する有益な資源になり得ると感じてきた。本発表では、個々の課題が学級の中で活かされた様子について、いくつかの事例を通して報告し、児童同士が有機的に相互援助を行う学級づくりについて考察する。