第14回大会

ポスター発表について

10月14日(日)

ポスター発表  9:30~11:50
(共通教育棟2号館 210番教室・211番教室)
学校心理学に関連する調査研究・実践研究などを発表していただきます。全国の仲間から計56本という多くのポスターが集まります。ともに、学び合いましょう。

在席責任時間  奇数番号 9時30分~10時15分(45分間)
偶数番号 10時15分~11時00分(45分間)
グループ別セッション     11時00分~11時40分(40分間)
グループ内発表者が相互に情報交換を行う時間です。
セッションは、大会協力員が進行します。
1人4分以内(質疑を含む)で、順番に発表してください。

【Aグループ】(チーム援助)

A1
今西 一仁(高知県心の教育センター)
高等学校における教育相談コーディネーター養成に関する実践的研究
-生徒支援コーディネーター研修における取組を通して-

近年、学校において、支援体制づくりや教育相談や特別支援教育等にかかわるコーディネーター養成の重要性が提起されてきた。こうしたニーズに応えるべく、高知県心の教育センターにおいては、平成21年度より、高等学校における生徒支援コーディネーターの養成を通して、予防的支援に焦点を当てた校内支援体制づくりに取り組んできた。これまでの取組から、今後のコーディネーター養成にかかわる方向性を提案したい。

A2
新井 雅(筑波大学人間総合科学研究科)・庄司 一子(筑波大学人間系)
学校不適応事例における教師、養護教諭、心理専門職による事例理解の相互比較に関する研究

現在、複雑化、多様化した様々な学校不適応問題が山積しており、立場が異なる複数の専門職による協働の必要性が指摘されている。しかし、異なる専門性を持つ専門職が協働する際には、当該事例の問題に関する相互の理解をすり合わせ、共有する作業が必要不可欠となる。本研究では教師(主として学級担任)、養護教諭、心理専門職(スクールカウンセラー等)を対象に、各専門職の事例理解に関する共通性や相違性を検討し、円滑な協働に向けての指針を示す。

A3
小野 藤子(筑波大学心理・発達相談室)・石隈 利紀(筑波大学)
チーム援助を活性化する保育士の行動

保育所(Nursery School)のチーム援助の活性化プロセスには、保育士の行動が重要である(小野・石隈、2012)。本研究では、巡回相談を受けた保育所で調査を行った。64保育所の保育士(N=182)の解析結果から、保育士は、相談員から問題解決的または受容的な対応から影響を受け行動すること。ただし受容的対応は、職員同士の連携には正の影響、保護者との連携には負の影響があること等が明らかとなった。

A4
相樂 直子(筑波大学附属高校)・石隈 利紀(筑波大学)
資源の活用を促す養護教諭のコーディネーションモデルの有効性の検討
-A高校におけるチーム援助の事例を通して-

本研究の目的は、筆者が生成した「資源の活用を促す養護教諭のコーディネーションモデル」(以下、コーディネーションモデル)の有効性の検証を行うことである。方法は、まずA高校の養護教諭を対象に、コーディネーションモデルを参考とした実践を依頼し、実践終了後、対象の養護教諭に実践内容や感想、評価について半構造化面接を行い、コーディネーションモデルの有効性について考察をする。

A5
西内 友人(高知県教育委員会人権教育課)・山岡  綾(高知県教育センター)
人権が尊重される学級経営・校内支援体制づくりの研究
-組織マネジメントを活かした協働的学年教職員集団の構築-

教職員の集団づくりにおいて、組織マネジメントを活用した教職員の協働体制づくりの手法に着目した。「協働性」を「同じ目標に向けて、議論し、練り上げて協力する行動」ととらえ、「協働性」を高めるために学年会の「運営と内容」「コミュニケーション」に焦点をあてた。

A6
濱田 陽治(高知県香南市立夜須中学校)・永井 桜子(高知県香南市立夜須中学校)
子ども達の心と体の健康度の向上 -生徒理解の徹底と組織的取組の効果-

夜須中学校は平成20年度から、学力問題やいじめ・暴力行為・不登校などの厳しい課題の根本解決を目指して、自尊感情、規範意識、コミュニケーション力の向上を中心に、「魅力ある夜須中学校実現プラン」に取り組んできた。このプランの4つの方策から、生徒理解の徹底と組織的取組による「3.子ども達の心と体の健康度の向上」について発表する。

A7
平野 知見(京都造形芸術大学)
就学前保育施設と小学校における連携の現状と課題
-「多文化な子ども」の実態調査を中心に-

保育所保育指針や幼稚園教育要領の改訂(H20)によって、今まで以上に「保幼小連携」の重要性が高まり、学校園所で様々な取組がなされている。しかし実際はいわゆる「交流」のみで終わっているところも少なくない。本研究は、滋賀県下における就学前の「多文化な子ども」たちの実態調査からみえてきた「小学校との連携」についての現状と課題を考察する。

A8
山田 留美子(聖徳大学大学院)・家近 早苗(聖徳大学)
スクールカウンセラーと教師が協力して行う子どもへの支援のプロセス
-援助ニーズの高い子どもに対する協働の視点から-

学校においては、教師とSCや相談員はお互いに異なる専門性や役割を生かして協力しながら子どもの支援を行う。特に援助ニーズの高い子どもを支援する過程において、教師とSCや相談員は、連携が難しいと感じる状況をどのように改善してより効果的な援助に結び付けていくのか、そのプロセスを明らかにして子どもの支援に役立つ方法を提言する。

【Bグループ】(大学生支援)

B1
飯田 順子(東京成徳大学)・田村 節子(東京成徳大学)・山口 正寛(東京成徳大学)
大学におけるスクールカウンセリングの実践①
-担任の役割に焦点を当てて-

近年、大学では発達障害や精神障害を有する学生など、援助ニーズが高い学生への支援が問題となっている。本研究では、そうした援助ニーズを抱える学生が多い大学において、担任が中心となって行ったスクールカウンセリングの援助実践を報告する。具体的には、学生90名に対し、学生の面談、電話相談、履修相談、関係者間の連携、保護者の面談、授業におけるSSTやグループエンカウンターの実施等を行っている。

B2
伊尻 正一(東日本国際大学)
教師用RCRTによる大学生の対人認知

本研究は、教師を目指す学生が自身の対人認知の傾向を知り、将来の生徒や保護者との関係づくりに資することを目的としている。本発表では、これまでに接した先生を対象にした教師用RCRTを4名、身近かな人たちを対象にした教師用RCRTを4名、計8名の大学生に実施した結果について報告する。教師用RCRTの結果から大学生の対人認知の特徴を考察すると共に、教職を目指している学生への具体的な実施方法や課題についても検討したい。

B3
伊藤 久仁子(共立女子第二中学高等学校)
キャリア観育成支援としての小論文指導

大学入試形態の多様化は高校3年次の進路決定時期の長期化・二極化をもたらし、進路指導のあり方に大きな影響を与えた。AO入試受験者の増加により、小論文・志望理由書(エントリーシート)作成という、従来の教科指導の枠組みを越えた援助ニーズが生じている。高3対象小論文講座受講者を対象とした調査により、表現学習がキャリア観育成に与える影響を考察する。

B4
田村 節子(東京成徳大学)・飯田 順子(東京成徳大学)・山口 正寛(東京成徳大学)
大学におけるスクールカウンセリングの実践②
-コーディネーターの役割に焦点を当てて-

近年、大学では発達障害や精神疾患を有する学生など、援助ニーズの高い学生への支援が問題となっている。本研究では、そうした援助ニーズを抱える学生が多い大学において行った援助活動について、コーディネーターの役割に焦点を当てて報告する。具体的には、全学生を対象とした援助ニーズ調査の実施、学生相談室の充実、関係者会議の開催等を行った。

B5
樽木 靖夫(帝京科学大学)
大学生の自己形成モデルの検討

大学生の自己形成について、彼らの活動の評価がアイデンティティ形成に影響するモデルが報告されている。本研究は、様々な活動へのモチベーション及び対処法略と自己成長指向性を加えたモデルとして検討する。

B6
鄭 丹丹(兵庫教育大学)・藤原 忠雄(兵庫教育大学)・由 恵子(中国海口経済学院)
大学生の進路選択に対する自己効力感が大学生に及ぼす影響についての中日比較研究

社会の発展とともに、大学生の進路に関するストレスはますます深刻になりました。本研究は進路不決断をストレッサーとし、進路選択に対する自己効力感をストレスの緩和要因とし、大学生の進路に関するストレス構造をとりあげます。また、中日の相違に注目して、中日の大学生の心身健康教育の発展に寄与したいと考えます。

【Cグループ】(ソーシャルスキルトレーニング)

C1
河添 純子(大阪府立泉鳥取高等学校)・橋口 正和(大阪府立泉鳥取高等学校)・松本啓子(貝塚市立青少年人権交流館)
3年生選択授業『ボランティア』の取り組み
-ソーシャルスキルの向上を目指して-

3年生の選択授業『ボランティア』では、自己紹介や自分を知るためのワーク、ものを頼む、断るためのスキル、会話を続けるスキルを取りあげたり、様々なグループワークを行っている。さらに近隣の幼稚園などに訪問して、喜んでもらえたり、待たれたりして、自信をつける中で、「自己紹介」や「初対面の人と話せる」という自己認識が向上した。

C2
鈴木 伸子(愛知教育大学)・坪井 裕子(人間環境大学)・野村 あすか(名古屋大学)・丸山 圭子(名古屋大学)・大矢 優花(名古屋大学)・畠垣 智恵(静岡大学)・松本 真理子(名古屋大学)・森田 美弥子(名古屋大学)
小・中学生の対人交渉方略とQOL

子どもの対人関係の発達やメンタルヘルスを巡る支援を行う上で、子どもの葛藤場面における対人交渉能力の特徴を明らかにすることは重要であると考える。本研究では、学校で生じることが多いクラスメイト間での意見の相違場面に焦点をあて、小・中学生の対人交渉方略(Interpersonal Negotiation Strategy)と自己記入によるQOL尺度との関連性を検討する。

C3
高木 むつみ(筑波大学大学院人間総合科学研究科)・庄司 一子(筑波大学大学院人間総合科学研究科教育学専攻)
集団SSTの実施と効果に対する教師の認識

現在の子どもたちの学校不適応問題に対する取り組みの推進として集団社会的スキル訓練(classwide social skills training;以下、CSSTと略す)が注目されている。CSSTの介入効果について、日常場面への般化と維持に関する問題は多くの実践研究で問題点としてあげられている(DeRoiser & Marcus、 2005)。この問題を解決するために、岡田(2010)はCSSTプログラムを教師が実践することを提案している。CSSTを実践した経験がある教師の認識を検討する。

C4
塚原 望(早稲田大学教育学研究科博士後期課程教育基礎学専攻)
中学生を対象とした思考力トレーニングがソーシャルスキルにもたらす効果に関する研究

本研究では、中学3年生2クラスに対する思考力トレーニングの実践について報告し、それが生徒の自己表現とソーシャルスキルにもたらす効果について考察した。実施後、ソーシャルスキル獲得度が中程度の生徒1名の自己表現とソーシャルスキルの変化について分析、考察したところ、それぞれ部分的に上昇が見られた。これにより思考力の育成が子どものソーシャルスキルを育てるにあたり一定の効果をもたらす事例が示された。

C5
藤原 正光(文教大学教育学部)・大野 翔太(千葉県小学校非常勤講師)
放課後の過ごし方と社会性との関連について
-社会的スキル・自尊感情に着目して-

小学5~6年生206名を対象に、1)放課後の過ごし方の現状、2)児童の遊びと社会的スキルおよび自尊心との関連、3)児童の習い事と社会的スキルおよび尊信との関連、について調査研究を実施した。結果は、1)遊んでいる日数は少なく、習い事をしている児童が多い、2)外での遊びは社会性と密接に関連しており、3)遊びを通して自尊感情も高まることが実証された。

C6
本田 真大(北海道教育大学)・金山 元春(高知大学)
現職教員のソーシャルスキルトレーニングの実践力養成に関する研究

学級集団へのソーシャルスキルトレーニング(以下、SSE)の実践力を高めるために、高知大学教育学部・教育コラボレーション研究プロジェクト・コミュニケーション力育成ワーキンググループ(2009年~2010年)の成果を利用した大学院授業を行った。現職教員2名がトレーナー、大学生6名がトレーニーとなってSSEの模擬授業を実施し、現職教員のSSE効力感と大学生のソーシャルスキルの点から授業の効果を検討した。

C7
森 裕佳(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)・吉田 俊和(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
勢力動機といじめ加害願望・仲裁願望の関連
-中学生を用いた勢力上昇手段の比較検討-

本研究の目的は、人の上に立ちたいという欲求(勢力動機)がいじめ加害願望や仲裁願望へ及ぼす影響について検討することである。中学生を対象に質問紙調査を実施した結果、勢力動機以上に、どんな手段を使えば人の上に立てるかという考え方の違いが、いじめやその仲裁に影響することが明らかになった。また、そういった手段に対するはっきりした考えを持っていない場合、勢力動機の高さなどによっていじめに対する態度が異なっていた。

【Dグループ】(特別支援教育)

D1
中村 健(プール学院大学)
高等教育における特別支援教育の実際
-チーム援助を活用した「ユニバーサル支援」の試み-

特別支援教育が小・中学校から就学前・高等学校へと展開し、大学全入時代でもある今日、高等教育機関における特別支援教育は喫緊の課題といえる。本発表では、学校心理学における心理教育的援助サービスの考え方やチーム援助会議、チーム援助シートを用いた大学での特別支援教育、特に発達障害学生への支援活動の実際を紹介しながらインクルーシブ社会の実現を目指すユニバーサルデザインによる大学教育のあり方について考察する。

D2
攪上 哲夫(東京福祉保育専門学校・東京福祉大学)
二重「半言語」セミリンガル児童生徒の追跡調査

思考する言語が育たないまま、海外から帰国をする児童生徒が見られる。いわゆる二重半言語「セミリンガル」と呼ばれる児童生徒である。本研究では、帰国子女教育を担当した発表者が、「セミリンガル」であると思われるA子の小学校5年から高校2年までの成長を追った記録である。文化間移動による「ゆれ」を記録し、A子とどう向き合ったかを発表する。

D3
島田 直子(筑波大学)
RtIの実践 -米国の小学校での事例から-

近年、米国の学校心理士の間でResponse to Interventionに基づいた心理援助サービスが行われている。日本でもその概念については紹介されているが、その実践例についてはあまり報告がなされていない。そこで本発表では、その実践について米国での事例を報告する。小学校での一つの事例を通してRtIの理念に基づいて行った一次的、二次的、三次的サービスについて紹介する。

D4
中尾 優里奈(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)・松本 真理子(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
特別支援学級児童の主観的well-beingに関する研究
-観察・面接・投影法を用いた事例を通して-

本研究の目的は、特別支援学級児童の主観的well-beingに関わる学校生活上の要因を探り、主観的well-beingをより向上させることのできる学校生活のあり方について検討することにある。方法は、知的障がい児2名を対象として、観察、半構造化面接及び動的家族画を実施した。その結果、主観的well-beingの状態にある事例においては、教師や友人とふざけるなどの関係の生起が多いことが示され、学校生活における教師や友人との関係の質・量がともに重要であることが示唆された。

D5
福島 順子(国分寺市教育委員会)
特別支援教育コーディネーターへの研修型コンサルテーション
-公立小・中学校特別支援教育コーディネーター同士の連携をめざして-

特別支援教育コーディネーターは、児童・生徒の支援におけるマネジメントに、それぞれの学校環境、職務、連携、スキル等において苦戦している場合が少なくない。本稿において、一年間の研修型コンサルテーションによる実効性ある校内支援体制の取り組みについて報告する。

D6
星山 知之(神奈川県立平塚盲学校1)
ツボ指し示し学習の正確性と迅速性を強化する指導援助の取り組み

盲学校で指圧師を目指す生徒にとって、全身に多数あるツボの位置を正確に学習し、患者の体表で迅速にその位置を指し示すことは難しい。そこで、治療に頻用されるツボを選び、学習スタイルを援助する指導方略を用いて、事前および事後テストの結果を比較し、正確性と迅速性の向上を尺度としてツボ指し示し学習の強化の有無を検討した。

D7
宮木 秀雄(広島大学大学院教育学研究科)
小学校教師の特別支援教育に関するイラショナル・ビリーフとバーンアウト傾向との関係

本研究の目的は、小学校教師の特別支援教育に関するイラショナル・ビリーフとバーンアウト傾向との関係を明らかにすることであった。A県内の公立小学校教師(1800名)への質問紙調査を行い、特別支援教育に関するイラショナル・ビリーフの強さによって回答者をBL群とBH群に群分けして分析した。その結果、BL群とBH群とではバーンアウト傾向に有意な差があることが示された。

【Eグループ】(不登校支援等)

E1
家近 早苗(聖徳大学)・石隈 利紀(筑波大学)
教師の行う心理教育的援助サービスを子どもがどう受け止めるか

本研究の目的は、教師が提供する心理教育的援助サービスを生徒がどのように受け止めているのかということについて検討することである。教師と生徒に対する調査の結果、心理教育的援助サービスは、教師、生徒ともに4因子構造であることが明らかになった。しかし、因子を構成する各項目については違いが見られた。生徒は、教師が提供する心理・社会面での援助を学習面での援助であるととらえる傾向があることが示された。

E2
大矢 優花(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)・畠垣 智恵(静岡大学)・坪井 裕子(人間環境大学)・鈴木 伸子(愛知教育大学)・野村 あすか(名古屋大学)・丸山 圭子(名古屋大学)・松本 真理子(名古屋大学)・森田 美弥子(名古屋大学)
日本とフィンランドの子どもにおける学校イメージ
-イメージ連想法(IAM)を用いて-

本研究では、日本とフィンランドの小中学生における学校イメージについて比較検討した。日本の児童生徒713名、フィンランドの児童生徒400名を対象に、イメージ連想法(IAM)を用いて、学校という言葉を見て思いつくことを書くよう教示した。テキストマイニング法による分析の結果、日本の児童生徒は行事や遊びについての記述が多く、フィンランドの児童生徒は勉強についての記述が多く示されるなど、国や学年で差異が認められた。

E3
坂本 憲昭(高知県芸西村立芸西中学校)
不登校改善から不登校予防へ

本校は、平成22年度に県教育委員会から不登校改善の指定を受けていた。チーム支援を中心とした取組の結果、不登校の出現率は、平成22年度の9.0%(高知県3.07%)から平成23年度は3.6% 、平成24年度は1.9%(5月現在)と大きな改善が見られた。ここでは、学校組織の改革及びチーム支援等の取組について報告する。

E4
田中 展史(福岡市教育委員会)
適応指導教室における不登校児童生徒の学校復帰に向けた取り組み
-個別支援計画の活用を通して-

適応指導教室は、不登校児童生徒の学校復帰及び社会的自立を支援するために設置された機関である。子どもたちの学校復帰に向けては、支援者が子どもの現状を正しく把握した上で、援助ニーズに合った明確な目標を設定し、個別に継続した援助を行うことが大切だと考えられる。そこで、本発表では適応指導教室における個別支援計画を活用した取組を報告する。

E5
野村 あすか(名古屋大学)・坪井 裕子(人間環境大学)・鈴木 伸子(愛知教育大学)・丸山 圭子(名古屋大学)・大矢 優花(名古屋大学)・畠垣 智恵(静岡大学)・松本 真理子(名古屋大学)・森田  美弥子(名古屋大学)
日本とフィンランドのひきこもり傾向児の学校における自己像および対人関係の特徴
-文章完成法を通して-

本研究の目的は、質問紙によって抽出した小中学生のひきこもり傾向児の学校における自己像、友人関係、および対教師関係の特徴を、文章完成法を通して検討することである。野村ら(2011)では、日本のひきこもり傾向児が否定的な自己像や対人関係の困難さを記述しやすいことを報告した。本研究では、日本とフィンランドのひきこもり傾向児を対象とし、国際比較を通して日本のひきこもり傾向児の特徴をより詳細に明らかにする。

E6
三浦 文隆(高知市立潮江小学校)
チーム援助から学んだ不登校の回復モデルと、臨床への適用に関する研究

学校心理学のチーム援助の考え方を不登校の支援に活用すると、学校と家庭の関係が良くなり、学校復帰に至る子どもが多くなった。そして、不登校の子どもが学校から離れてから学校(社会)につながり直してくるまでの過程に、共通する回復・成長(発達)の過程があることに気づき、そのモデル化を試みた。そして、そのモデルを実際の支援に適用すると、援助チームの形成やチーム内の合意形成、子どもの学校復帰などに有効であった。

E7
吉村 美佐子(聖徳大学大学院修士課程、埼玉県私立中学・高校スクールカウンセラー)・家近 早苗(聖徳大学)
不登校の子どもの保護者が、援助者の援助を受け入れるプロセスの研究

子どもの問題状況の改善には、子どもとの面談などの直接的な援助を行うと同時に保護者への支援を意図的に進める必要があるのではないだろうか。よって本発表は保護者がスクールカウンセラーや相談員の支援をどのように受け止めているのかを明らかにすることで、子どもや保護者への効果的な援助について発表することとする。

【Fグループ】(心理学的基盤)

F1
石津 憲一郎(富山大学人間発達科学部)・下田 芳幸(富山大学人間発達科学部)
日本語版中学生用随伴性自己価値尺度の作成

本研究はBurwell&Shirk(2006)による、随伴性自己価値尺度を日本の中学生に適用するために、尺度の信頼性と妥当性を検討することだった。因子分析の結果、元の尺度と同じ因子構造は得られなかったが、内的一貫性と再検査信頼性が確認された。また、日本語版の随伴性自己価値は欠席日数、非機能的態度、自尊感情、過剰適応との関連が検討され、十分な妥当性を持つことが示された。

F2
折笠 国康(筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科)・庄司 一子(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
中学生の本来感が、学校ストレス認知、学校忌避感情及び関係性攻撃に与える影響

中学生の認知する学校ストレスが、学校忌避感情や関係性攻撃といったストレス反応に影響を与えることが確認されている。そこで、最近の研究で適応の指標としても用いられている自分らしさの感覚である本来感が、学校ストレス認知や学校忌避感情及び関係性攻撃に与える影響について、パス解析によって検討する。

F3
小住 智子(大阪市立西三国小学校) 児童・生徒のクリティカル・シンキング志向性に影響を及ぼす諸要因の検討
-リラックス感、自尊感情、自己統制感との関連を通して- 

新指導要領では生きる力の育成を目標に言語活動の充実や社会生活上の自覚を促す道徳教育が挙げられている。これらは、学習者を良き思考者や市民に育てるためにクリティカルシンキングを教えることが必要だとする楠見(1996)の理論に合致する。本研究では環境に自在に合わせるためのリラックス感・自己と対峙する自己統制感・意識や行動を支える自尊感情がクリティカルシンキング志向性に影響を及ぼしていると仮説し検討した。

F4
児玉 裕巳(筑波大学大学院人間総合科学研究科)・石隈 利紀(筑波大学)
学習困難場面における援助についての検討(第一報)
-中高生を対象に、1次的および2次的学習観に着目して-

先行研究における広義と狭義の学習観を整理し、1次的学習観(学習に対する認知的・行動的・情緒的側面からなる態度)と2次的学習観(効果的だと考える学習方略に関する信念)に再定義した。1次的学習観の3側面のレベルは「ポジティブ-ネガティブ」の度合いで把握でき、プロフィールが描ける。1次的学習観の項目をボトムアップ式に収集するために、高校生と中学生を対象に半構造化面接を行い、項目のカテゴリー化を行った。

F5
下坂 美和(高知市立城北中学校)
生徒リーダーの育成による学校組織の活性化の試み
-生徒の自己イメージの変容を手がかりに-

学校組織の人的資源として、生徒リーダーがあげられる。中学校は、学級を母体として、代表委員及び各専門委員で組織されており、生徒会執行部が果たす役割は大きい。また、キャプテン会を中心としての部活動による朝の清掃活動は学校教育を大きく支えている。本発表では、生徒会執行部にどのような影響を与えるのか、生徒の自己イメージの変容を手がかりに実践を分析し、成果を明らかにしていきたい。

F6
坪井 裕子(人間環境大学)・鈴木 伸子(愛知教育大学)・野村 あすか(名古屋大学)・丸山 圭子(名古屋大学)・大矢 優花(名古屋大学)・畠垣 智恵(静岡大学)・松本 真理子(名古屋大学)・森田 美弥子(名古屋大学)
日本の子どもの友だち領域におけるQOL
-フィンランドの子どもとの比較-

本研究の目的は、フィンランドとの比較から、日本の子どもの友だち領域のQOLの特徴を明らかにすることである。これまでの研究(Tsuboi et al、2011)では日本の子どもの全体的なQOLはフィンランドの子どもより有意に低いことが示されているが、QOL尺度の友達領域項目の分析を行ったところ、日本のほうが有意に高い項目が一部示された。それらを元に、日本の子どもの友人関係の特徴について検討を行う。

F7
畠垣 智恵(静岡大学人文社会科学部)・大矢 優花(名古屋大学)・松本 真理子(名古屋大学)・坪井 裕子(人間環境大学)・鈴木 伸子(愛知教育大学)・野村 あすか(名古屋大学)・森田 美弥子(名古屋大学)
日本とフィンランドの子どもにおける「私」イメージ
-イメージ連想法(IAM)を用いて-

本研究では、日本とフィンランドの小・中学生に対し、私とはどんなものだと思うか、「私」についてのイメージを複数書いてもらい、その中に出てきた言葉を両国間で比較した。テキストマイニング法によって、日本の小学4年生と中学2年生計713名、フィンランドの4年生と8年生計400名を分析した。その結果、フィンランドの子どもで上位を占めた言葉は「すてき」「親切」「良い」であり、日本の子どもは、学校の教科が「好き」「嫌い」であった。

【Gグループ】(援助者)

G1
板垣 市子(山形県スクールカウンセラー)・石隈 利紀(筑波大学)
生徒が感じた中学校教師による過剰な援助に対する認知の比較

教師による過剰な援助に対する認知「介入への抵抗」と「評価への願い」を高低に分けて、比較検討を行った。その結果、高い生徒は教師に対して反発心を持つと同時に、教師に従属をしていくことが考えられた。また、教師からまかされた時の認知「みんなの期待に応えたい」と「自律への願い」の高低の比較は、高い生徒は学校生活の適応への意欲を持ち自分への肯定感が高くなることが示唆された。

G2
来田 宣幸(京都工芸繊維大学)
中学校における日常的な学習・生活場面・時間帯を想定した生徒指導

本研究では、日課的な場面で生徒が感じる学級内の居心地を測定する尺度づくりを目的として、公立中学校に在籍する生徒1158名を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、「登校・教室入室」「朝の会・朝学習」「授業」「休み時間」「昼食」「掃除」「帰りの会」「放課後・学校外」の7つの日課別場面に整理され、それぞれの日課において生徒が不安に感じる項目と存在感を感じる項目に分類することができた。

G3
小林 幹子(兵庫教育大学大学院学校教育研究科)・藤原 忠雄(兵庫教育大学大学院)
わが国の学校教育相談実践の展開史

東日本大震災における自然災害や人的災害により、従来の子どもへの個別支援の他に、多種多様な援助が学校現場で求められている。そのため、現在の学校教育相談の在り方について、改めて再検討する必要性が出てきた。そこで、大野の学校教育相談の理論化の手法に則り、戦前から大震災までの学校教育相談実践の展開史を概観するとともに、隣接領域における動向やその意義について改めて整理することとした。本発表では、展開史を中心に報告し、課題の整理と今後の展望への足掛かりとしたい。

G4
深澤 大地(富山県総合教育センター)
教師の教育相談能力向上のための研修について

公的な教育相談機関では、教師が相談担当者となり、児童生徒や保護者からの相談を受けることがある。しかし、このような教師に対して十分な研修が行われていないのが現状である。本研究では、教育センターで教育相談を担当する教師を対象に、全5回の教育相談能力向上のための研修プログラムを作成、実施した。全5回の研修終了後に自由記述による回答を求め、研修の効果について検討した。

G5
山崎 優子(竹早教員保育士養成所)
新任保育者の悩みから考える保育者養成について

新卒保育者はいろいろな悩みをもっていると考えられる。保育者としての悩みに関する回答から、悩んでいる時期やどのような内容について悩んでいるのかを明らかにしたい。また、その悩みの分析を基にして、今後の保育者養成の指導に役立てることを目的としている。

G6
吉田 惠子(高崎健康福祉大学)
いじめ判例から見る援助者の気づき

小学校・中学校等において、いじめから不登校になった事案等、いくつかのいじめ判例を検討する中で、大きなトラブルを未然に防ぐ学校の危機管理運営について、学校教師やスクールカウンセラーの「援助者としての気づき・行動面」から示唆し、論じる。

G7
吉村 豊隆(跡見学園女子大学大学院)・山口 豊一(跡見学園女子大学)
療育機関におけるサポートに関する研究
-保護者の求めるニーズに視点を当てて-

本研究は、療育機関でサポートを受けている子どもの保護者が求めるニーズについて明らかにすることが目的である。そこで、保護者に対する自由記述から質問項目を作成し、予備調査を実施した。その結果、House(1984)の提案する四種類のサポートの視点から検討した。

【Hグループ】(一次的援助サービス)

H1
柏 頼英(茨城県学校教育相談研究会)・森山 賢一(玉川大学教育学部)
潜在可能性から現実性を目指す生徒指導(2)
-「質実献身」・「レジリエンス」・「感謝」-

人間には、いかなる惨事にも対処し、生きぬいていく力が備わっていることを感じることなく、子どもたちは日常生活を送っていることが多い。ここで、今までの生活を振り返り、子ども一人ひとりに備わっている回復能力の大切さに気づかせたい。そして、昨年3月に発生した東日本大震災の被災地の人たちの実質献身並びにレジリエンス(回復力)のすばらしさを共感していきたい。さらにそこから得た自己実現の力を感謝の念にまで高めていきたい。

H2
寺田 未来(広島大学大学院総合科学研究科)・浦 光博(広島大学大学院総合科学研究科)
学校適応は何に規定されているのか
-日頃の学習活動に着目して-

本発表では、授業中や家庭における日頃の学習活動が学校適応にどのような影響を与えるのか検討した調査研究の結果を報告する。本研究では、生徒一人ひとりの高校生活への適応状態を「居心地の良さの感覚、課題・目的の存在、被信頼・受容感、劣等感のなさ」という4つの観点から捉える(大久保、2005)。調査の結果、どのような学習活動が学校適応と結びつくのかが明らかになった。さらに、こうしたさまざまな学習活動に従事する生徒の特徴を考察することができた。

 
H3
都丸 けい子(平成国際大学)・竹川 佳津子(東京国際大学)
東日本大震災による避難児童へのグループミーティングの取り組み
-語られた内容とグループで語ることの意義-

東日本大震災に伴う原発事故により、2011年3月末にA県B町民はC県D市へ集団で避難した。B町からの転入児童の通うE小学校では、スクールカウンセラー(筆者ら)を中心に、同年10月より転入児童を対象としたグループミーティング(「Bの会」)を学年ごとの小グループで継続的に実施した。本研究の目的は、子どもたちの語りの内容を分析することである。さらに、「Bの会」で語ることの持つ意義についても検討を行う。

H4
日向野  晃(栃木県総合教育センター)
 心理教育的援助サービスを生かした新校設立の取組み
-退学者未然防止に向けた3次支援から1次支援へ-

生徒数の減少等による高校の統廃合が行われ、総合選択制という新しいタイプの学校が設立された。対象の2校はともに生徒指導が重点課題の学校であり、退学者数が県内において一二にを争うような学校であった。問題行動に対する対処的な3次支援から、将来を見据えたきめ細かな1次支援を行うことにより、生徒と教員の信頼関係を作り、生徒が明るく元気に、そして安心できる学校となった。その取組事例を発表したい。

H5
森山 賢一(玉川大学教育学部)・柏 頼英(茨城県学校教育相談研究会)
潜在可能性から現実性を目指す生徒指導(1)
-「忘己利他の精神」・「レジリエンス」-

わたくしの人生の句読点の中で最も印象に残ったのは、「個人の内部には、たとえ目には見えなくても、その人の成熟(Maturity)に向かって絶えず前進する力(Zeft for Living)と傾向性がある。それがある適切な心理的風土を与えられると潜在可能性から現実性に向かって足を踏み出す。(C.Rogers)」ということばです。昨年の東日本大震災から今年の3月11日でまる1年が経過、日本列島各地、海外でも黙とうがささげられた。あの日を忘れることなく強い「回復力(レジリエンス)」「忘己利他の精神力」であらゆる困苦を乗り越えていきたい。そして、わたくし自身、これらの力が人生の句読点となるよう現実性に向かって足を踏み出していきたい。

H6
山口 豊一(跡見学園女子大学)・日賀野 晃(埼玉県総合教育センター)
学校行事「収穫祭」と学校適応感との関係

近年、学校が抱えている問題は多様化し、不登校やいじめなど様々な不適応問題が課題となっている。このような子どもたちの問題を解決するための方法の一つとして、学校行事などの特別活動が挙げられる。特別活動の目標は、集団の一員として、よりよい生活を築こうとする自主的・実践的な態度を育てることである。本研究では、学校行事「収穫祭」が生徒の学校適応感および自尊感情に及ぼす影響を検討する。

H7
横田 隆(高知県心の教育センター)・氏次 容子(高知市立三里中学校)・大城 由美(高知県心の教育センター)
高知県におけるQ-Uの効果的な活用に向けて
-教師の意識調査に基づく促進要因及び阻害要因の分析を通して-

本研究は、教師のQ-U活用の影響に及ぼす促進要因と阻害要因を探るため、「温かい学級づくり応援事業」における調査結果の再分析や教師を対象とした意識調査を行った。その結果、促進要因としては、「子どもへのかかわり姿勢」と「教職への意欲」としての因子が見出された。この結果に基づき、今後のより効果的なQ-Uの活用の方策について考察した。