第16回大会

【Aグループ】(チーム援助A)

A1
家近 早苗(聖徳大学)・石隈 利紀(筑波大学)・浜崎 美保(神奈川県立総合教育センター)・田中 宏史(神奈川県立総合教育センター)
特別支援教育コーディネーターは「ほんものチーム」をどのように作るか

本研究の目的は、校内委員会での話し合いが、「ほんものチーム」になるために必要な要因を見いだすこと、そのために特別支援教育コーディネーターが果たす役割について検討することであった。特別支援教育コーディネーター12名を対象に半構造化面接を実施し、回答をM-GTAによって分析した。その結果、「ほんものチーム」は、①校内委員会の相談機能の発揮、②コーディネーターとしての任務の遂行、③周囲の教師に援助を広げる関わり、④援助チームの継続の工夫、⑤組織的な体制づくりから構築されることが明らかになった。

A2
馬場 一平(江戸川区立大杉東小学校)・安藤 正紀(玉川大学)
組織で行う特別支援教育の実状と今後の方策 
小学校でできる具体的な取り組み

本研究は,小学校の特別支援教育の実状を明らかにし,今後の方策として具体的な取り組みや行政施策に重点化して提案を試みるものである。実状については,「小学校における特別支援教育対象児のとらえ方」と,「『個別の教育支援計画』や『個別の指導計画』の活用」の観点で調査を行った。今回はその調査結果の報告と,今後の総合的施策として,①小学校に向けた提案「特別支援教育コーディネーターの役割と校内組織の連携体制」と,②行政に向けた提案「3年間を見通した校内研修計画」の2つの提案を行う。

A3
諸戸 美奈子(公立中学校)
校内適応教室の取り組み ―校内支援体制構築の実践から―

不登校や生徒の問題行動の指導など生徒の対応に苦慮している学校において、校内の体制づくりと生徒の居場所づくりを行い「指導」と「支援」の両輪で生徒の対応をすすめていった。体制づくりでは支援コーディネーターを中心とした生徒支援推進委員会、生徒の居場所づくりでは校内適応教室を設置した。校内適応教室は担当教員が中心となり個別の教育支援計画を作成し、小集団の支援教育をチーム支援で実践した。

A4
山崎 沙織(鳥取県スクールカウンセラー)・飯田 順子(筑波大学人間系)
援助ニーズの高い生徒への教育相談体制づくり

筆者がSCとして勤務している中学校には,不登校など援助ニーズの高い生徒が多数在籍している。そのような援助ニーズの高い生徒に対する支援を充実させるため,教育相談体制を整えていった中学校での実践を報告します。生徒の支援に学校全体が取り組んでいくための組織づくりとはどのようなものか,SCとして何ができるか,本校の実践を整理し今後の課題を考える。

A5
新井 雅(筑波大学大学院)・庄司 一子(筑波大学)
スクールカウンセラーと教師のアセスメントの共有方略パターンと 職種間協働の関連

複雑化・多様化した学校不適応事例への援助において職種間協働は必須であり,その協働の基盤としてアセスメントの果たす役割は大きい。事例に対するアセスメントを基盤として相互の考えを共有し円滑な協働へつなげるため,スクールカウンセラー(SC)や教師が用いる実践方略を検討することで,質の高い協働への示唆が得られると考える。本研究では中学校のSC・教師のアセスメントの共有方略と職種間協働との関連を検討する。

A6
忍田 とし子(茨城県公立小学校)
養護教諭の行う三次的援助サービス
自殺企図に関する発達障害のある不登校児への危機介入を通して

本研究の目的は,喪失体験をし,うつ状態になって登校することができなくなり,さらに自殺企図をした発達障害のある児童に対し,毎日家庭訪問を続けることによって,信頼関係を築き,生きる力を取り戻させ,再び登校できるようにするために,養護教諭が行うカウンセリング及び校内・校外の援助者との連携の在り方を究明するものである。

A7
松本 真理子(名古屋大学)・飯田 順子(筑波大学人間系)・坪井 裕子(人間環境大学)・鈴木 伸子(愛知教育大学)・野村 あすか (名古屋大学)・垣内 圭子(名古屋大学)・大矢 優花(愛知医科大学病院)・畠垣 智恵(静岡大学)・森田 美弥子(名古屋大学)・
日本の学校現場における心理専門家の役割・養成・課題に関する一考察
~フィンランドにおけるスクールサイコロジストとの比較~

われわれは、2003年から日本とフィンランドにおける学校環境と心の健康に関する2国間共同研究を進めてきた。その一環としてスクールサイコロジストの役割や養成システムなどについて現地のスクールサイコロジストおよび関係者へのインタビュー調査と文献収集によって検討してきた。本報告では、その結果を通して、日本の学校現場における心理専門家の役割、養成そして課題について考察したい。

【Bグループ】(チーム援助B)

B1
長谷川 恵(跡見学園女子大学)・山口 豊一(跡見学園女子大学)
小学校教師における共同体感覚に関する基礎的研究
ー共同体感覚「小学校教師」の質問項目の収集と選定ー

近年、学校における今日的課題は社会状況や子どもの変化等を背景として複雑化・多様化しており、教師の精神的健康は深刻な状態にある。共同体感覚は,社会適応や精神的健康との関連が指摘されており、教師自身の共同体感覚が高いことで,教師間のチーム援助が促進され,教師のメンタルヘルスの向上に繋がると考えられる。そこで,本研究では小学校教師の現状に即した共同体感覚尺度の開発を行ない、小学校教師の共同体感覚を捉える。

B2
宮木 秀雄(山口学芸大学)
小・中学校の特別支援教育コーディネーターの悩みに関する調査研究
―調査時期による変化の検討―

本研究の目的は,小・中学校の特別支援教育コーディネーターの悩みについて質問紙調査を行い,2010年に行った調査のデータと比較することにより,悩みの変化を明らかにすることであった。A県内の公立小・中学校のコーディネーターを対象に調査を行った結果,小学校だけでなく中学校においても特別支援教育が着実に浸透していることが示唆された。一方で,ほとんど変化していない悩みがあることも明らかになった。

B3
谷島 弘仁(文教大学)
教師の学校コンサルテーション利用に影響を及ぼす要因

小・中学校の教師が学校コンサルテーションを利用するかどうかに影響を及ぼす要因を明らかにすることを本研究の目的とした。126名の小・中学校の教師が調査に参加した。教師の性別や年齢などの属性,会話スキルの高低,問題解決型コーピング等を独立変数とし,過去のコンサルテーション利用状況を従属変数として数量化Ⅱ類により分析を行った結果,教師のコンサルテーション利用に影響を及ぼす要因が見いだされた。

B4
吉田 光成(筑波大学大学院 人間総合科学研究科心理学専攻)
教師のスクールカウンセラーへの相談行動に対する利益とコストの影響①
―利益とコストの予期内容に関する探索的研究―

本研究は教師が職業上の悩みをスクールカウンセラー(以下、SC)へ相談する際の利益とコストの予期がどのように相談行動を促進、抑制しているのかを検証する研究である。具体的には、教師がSCに相談する際の利益とコストの予期内容の探索的研究の結果を発表する。
本研究では、利益とコストの予期内容を検討するために小・中・高等学校教師に対して自由記述式質問紙調査およびフォーカスグループインタビューを行い、調査結果より利益とコストの予期内容を探索的に検討した。

B5
深澤 大地(富山県スクールカウンセラー)
教師が相談担当者を経験することによって生じる心理的変化について
~教育相談機関に勤務する教師に焦点を当てて~

教育センターなどの公的な教育相談機関では、児童生徒や保護者などの教育相談が行われている。心理の専門家である心理士等が相談を受ける機関もあれば、教師が人事異動によって相談担当者となることも少なくない。教育相談機関で教育相談やカウンセリングの考え方を学んだり、相談担当者を経験することが、教師にどのような心理的変化を与えるのか自由記述による回答を求めた。自由記述による回答をKJ法で分類し、結果について考察した。

B6
菊池 直人(茨城大学大学院)・金丸 隆太(茨城大学大学院)
中学校教員の自我状態と生徒対応の関係からの一考察

新版TEGⅡと自作の生徒対応に関する質問紙を用いて、中学校教員280名を対象に質問紙調査を実施した。その結果、教員の自我状態と生徒対応の間には関連が見られることがわかった。各種の分析結果から、教員が自身の自我状態を知り、それに合わせて自身の生徒対応の特徴を理解することの有効性が示唆された。本研究の結果から、生徒の特性の伸張,教員自身の成長,といった中学校における効果的な教育活動の展開を考察した。

B7
松尾南美子(聖徳大学大学院)・家近早苗(聖徳大学)
児童養護施設職員の直接処遇職員が長く働き続けるための要因
本研究は、児童養護施設職員の長期的な就労に関連する要因を明らかにし、その関連性を検討する事を目的とした。長期的な就労要因を明らかにする事で児童養護施設職員の早期離職を防ぎ、援助者に対する支援、さらには施設に入所する児童の支援に繋がると考えた。児童養護施設に5年以上勤務する職員5名に半構造化面接を実施。得られた内容から項目を抽出した結果【自分の限界に対する理解】【相談できる同僚の存在】【経験を活かす力】【ライフイベントとの両立】【仕事に対するこだわり】【同僚からの評価】など23のカテゴリが得られた。

【Cグループ】(インクルーシブ教育)

C1
中澤 幸子(山梨大学)・星山 知之(元神奈川県立平塚盲学校)
学校教員が考える思春期小児がん患児支援
心理教育的援助サービスを観点とした分析

思春期の小児がん患児の療養生活を支えるためには、思春期の発達課題と疾患という2つの視点から支援を考える必要がある。その方向性を探るための一研究として、思春期小児がん患児にかかわったことのある教員を対象に、患児にとって学校の意味、配慮についてなどについての質問項目を設定し調査を実施した。その結果を学校心理学として考える、心理教育的援助サービスを観点とした分析を試み、学校教員が考える思春期小児がん患児への支援について考察を行った。

C2
池谷 航介(大阪教育大学)・井坂 行男(大阪教育大学)
通常の学級における児童の援助行動に関する研究
―保育者・教師用SDQによる援助行動の表出が顕著な児童像の把握―

我が国では障害者の権利に関する条約批准にともない,通常の学級においてインクルーシブな教育環境の構築が急務となっている。障害等の有無に関わらず,児童同士が相互に援助し合える環境やその児童像について,詳細な研究が必要なのではないかと考えてきた。そこで本研究では,通常の学級担任を対象に保育者・教師用SDQを用いた調査を実施し,援助行動の表出が顕著に見られる児童像を分析した。

C3
高田 薫(鎌倉市立植木小学校)
発達障害を疑われる子どもの保健室来室時の対応についての研究
―子どもの反応・認知に対する養護教諭の判断と対応―

公立小中学校に勤務する養護教諭7名を対象に発達障害を疑われる児童生徒が保健室来室時に配慮を要した事例について、その出来事と養護教諭の判断と対応について半構造化面接を行った。その結果、出来事には【けが・病気の手当】【心の安定】【自己の状況把握】があり、養護教諭の判断と対応では【対象の直観的把握】【専門職としての判断】【判断決定の要因】【対象を安定させる働きかけ】【手当の工夫】【校内連携】が抽出された。

C4
鈴木 正一(神奈川県立総合教育センター)・浜崎 美保(神奈川県立総合教育センター)・持田 訓子(神奈川県立総合教育センター)
来所相談事例から見る高校生支援の一考察
インクルーシブな高校づくりをめざして

教育相談センターにおける来所相談事例より、「発達障害のある生徒の行動上の問題への支援」「発達障害のある生徒の登校しにくさに対する支援」「軽度知的障害のある生徒の学習支援」等を取り上げ、学校の取り組みによって生徒が支えられた事例から見える「支援のポイント」や、相談員が感じた「教員の意識の変化」をまとめ、インクルーシブな高校づくりに向けた今後の課題を考えてみたい。

C5
澤口 真理(三重大学大学院)
発達障害の疑いのある高校生の進路支援

発達障害の疑いのある高校生に対する支援の取り組みの事例である。校内外のリソースを徹底的に活用し、本人と保護者の自己理解や障害受容を支援することで、高等学校卒業後に地域社会で就労し、本人が自立して生活していくための進路決定のための支援を行った。医療、福祉、教育など各機関の連携をコーディネーターが調整し、多方面から本人と保護者にアプローチすることで、高等学校卒業後の人生設計をも考慮した進路をデザインした。

【Dグループ】(子どもへの支援)

D1
町 岳(大田区立東調布第一小学校)・中谷 素之(名古屋大学)
算数グループ学習における相互教授法の介入効果(6)
児童の社会的効力感と学業的援助提供行動般化可能性の検討

算数グループ学習において相互教授法による介入を行い、その効果を学業達成度や質問紙(グループ学習への肯定的認知・学業的援助提供行動)により調査した。また協同学習場面における相互作用の質に影響すると考えられる、児童の社会的効力感と相互教授法介入の交互作用効果、および介入群の協同学習場面において見られた学業的援助提供行動の他の学習場面への般化可能性について検討した。

D2
橘 春菜(名古屋大学)・中谷 素之(名古屋大学)
学業不振傾向のある中学生への個別学習支援
思考の表現過程に着目した実践事例

学業不振傾向のある中学3年生に対して,約6ヵ月間,週1回の個別学習支援を行った事例を報告する。生徒の思考の表現過程に焦点をあて,主体的に理解しようとする学習動機づけを支援することを主な目的とした。継続的な個別学習支援を通じて,対象生徒が自分自身でミスに気づき,課題に対して多様なアプローチを粘り強く試みる様子が多くみられるようになった。最後に,自律的な学習へと結びつく学習支援について考察した。

D3
兒玉 裕巳(こども鎌倉臨床教育研究所)・石隈 利紀(筑波大学)
中学・高校生の学習に対する態度プロフィールの検討

中学・高校生を対象として認知・行動・情緒の3側面からなる学習に対する態度尺度を作成した上で質問紙調査(中学生598名、高校生763名)を行った。得られたデータを元に非階層的クラスタ分析を行い、解釈可能性から中学・高校生ともにポジティブ群・ネガティブ群などの4クラスタが抽出された。また個人プロフィールを作成しその個人の学習歴や学習の悩みとの関連について質的に検討した。

D4
撹上 哲夫(東洋大学大学院博士後期課程)
教職課程における「生徒指導論」に関する研究
石隈・田村式「援助チームシート」の活用

教職課程「生徒指導論」の中で、「石隈・田村式援助チームシート」の活用方法をT大学で指導した。普段、児童と接することの少ない学生らが、「ちびまる子ちゃん」の視聴を通して、苦戦している児童の情報収集の方法、援助方針・援助案を立てることが可能であることが実証された。子どもが苦戦していることはなにか、子どもの苦戦している状況を援助シートの活用から、実践的に学生らは理解することができた。

D5
飯田順子(筑波大学)・石隈利紀(筑波大学)・甲斐雄一郎(筑波大学人間系 筑波大学附属学校教育局)・松本末男(筑波大学人間系 筑波大学附属学校教育局)・深澤隆幸(筑波大学附属坂戸高等学校)・工藤泰三(筑波大学附属坂戸高等学校)・石井克桂(筑波大学附属坂戸高等学校)・今野良祐(筑波大学附属坂戸高等学校)・藤原健志(筑波大学人間系 筑波大学附属学校教育局)
海外研修旅行が国際理解の向上に及ぼす影響(2)
~「オーストラリア」を選択した生徒の経験について~

教育現場では,グローバル人材の育成ということが目標として掲げられている。一方,グローバル人材をいかに育てるかということに関する実証的な研究は少ない。本研究は高校が実施する海外研修旅行の効果を検討する一連の研究の一部であり,本研究ではオーストラリアを選択した生徒95名を対象に事前事後に実施した「国際理解」を測定する尺度についてt検定で比較した。その結果,「外国人親和性」「自国理解」「英語力」が有意に上昇した。

D6
石隈 利紀(筑波大学)・深澤隆幸(筑波大学附属坂戸高等学校)・工藤泰三(筑波大学附属坂戸高等学校)・石井克桂(筑波大学附属坂戸高等学校)・今野良祐(筑波大学附属坂戸高等学校)・甲斐雄一郎(筑波大学人間系 筑波大学附属学校教育局)・松本末男(筑波大学人間系 筑波大学附属学校教育局)・飯田 順子(筑波大学)・藤原健志(筑波大学人間系 筑波大学附属学校教育局)
海外研修旅行が国際理解の向上に及ぼす影響(3)
「台湾」を選択した生徒の経験について

本研究は,高校の海外研修旅行の効果を検討する一連の研究の一部である。本研究では台湾を選択した生徒55名の「国際理解」の調査の事前事後の得点をt検定で比較した結果,「他者との共同での問題解決能力」において事後の得点が有意に高いことが示された。台湾の研修旅行では、「自然」「防災のあり方」「漢字文化」という特定のテーマを選び、現地の高校生と協同学習を行っている。こうした協同作業が、グローバルな課題を意識し、共同で問題解決することの重要性を意識する体験となったことが考えられる。

D7
石井克桂(筑波大学附属坂戸高等学校)・深澤隆幸(筑波大学附属坂戸高等学校)・工藤泰三(筑波大学附属坂戸高等学校)・石隈利紀(筑波大学)・飯田順子(筑波大学)・甲斐雄一郎(筑波大学人間系 筑波大学附属学校教育局)・松本末男(筑波大学人間系 筑波大学附属学校教育局)・大島由之(群馬医療福祉大学)
海外研修旅行が国際理解の向上に及ぼす影響(4)
~「インドネシア」を選択した生徒の経験について~

本研究は、生徒たちが事前に行先を3か国(インドネシア、台湾、オーストラリア)の中から選択するという特色ある取り組みを実践している高校の海外研修旅行の効果を検討する一連の研究の1つであり、今回は「インドネシア」を選択した生徒の経験を検討する。

【Eグループ】(学生への支援)

E1
成澤 佑太(茨城大学大学院)・金丸 隆太(茨城大学大学院)
高校教諭による卒業後支援の実態調査
パイロットスタディとして

現在我が国では、高等学校卒業・就職後1年以内の離職率が約20%におよんでいる。離職率を下げる方法として、卒業後にも高等学校の教諭に相談できる機会があることが望ましいが、高校教諭は卒業生の支援に時間を割けないという現実がある。そのような現実をより詳細に把握するために、高校教諭を対象にパイロットスタディとして卒業後支援の実態調査を行った。その結果、高等学校の卒業後支援の現状がいくつか明らかになった。ここから、現実的な卒業後支援策を考察した。

E2
樽木 靖夫(帝京科学大学)
大学生の自己表現への方略のなさを低減する試み
話し合いに焦点をあてて

大学生のアイデンティティ形成に抑制的に影響する「自己表現への方略のなさ」を知的・心理的に安全で興味がもてる2、3名のグループでの話し合いにより低減できるかを検討した。幼児教育系学科1年では、「安心感を得る話し合い」「考えを深める話し合い」のいずれにおいても自己表現への方略のなさを低減し、理工系学科1・2年では、「考えを深める話し合い」のみで自己表現への方略のなさを低減した。

E3
湯浅 俊夫(中央大学講師)
大学生の書く力・考える力をめぐって
彼らはどこで躓いたのか・書く力をどのようにつけるのか

学生たちは、なぜ「書くのが苦手」になったのか。苦手意識の内実はいかなるものなのか。その要因をつきとめ、学生たちが喜んで書き、考える力を伸ばすための技術を開発する。さらに、「書くこと」が書き手になにをもたらすのかを調査・研究する。

E4
田村 節子(東京成徳大学)・渡部 雪子(東京成徳大学)・菊池 春樹(東京成徳大学)・新井 那二郎(東京成徳大学)根津 克己(東京成徳大学)・西村 明徳(東京成徳大学)
学生の困り感に対する援助モデルの作成および援助活動報告

近年、大学教育の中で様々な援助を必要とする学生が増加しつつある。本研究は大学生の困り感の実態把握と援助モデルを作成することを目的としている。3年間を1期とし、各期ごとに目標を設定し援助を積み上げ3期9年間での援助モデル構築を試みる。具体的には、A大学の学生の多様な援助ニーズの実態把握およびスクリーニングを行い、大学生の援助ニーズを踏まえた大学における援助モデルを作成した。当日は作成した援助モデルに基づいて行う援助活動構想の一部を報告する。

E5
寺田 未来(大手前大学)
大学新入生に必要な学習支援とは ~解釈レベルを踏まえた検討~

初年次教育において必要とされる自主学習にはノートテイキングや,問題の要求を正しく読み取る,などの高度なレベルの学習方略定着が必要となる。本研究は,学習者の特徴に応じて必要とされる学習支援・方略指導のあり方を明らかにしていく端緒として,まずは学習者と支援・指導者の間で課題の捉え方や受け取り方,解釈の仕方が異なっている可能性を考慮し,解釈レベルと学習観,課題の先延ばし傾向,援助要請との関連を検討した質問紙調査結果を報告する。

E6
山本 智子(皇學館大学)
大学生に対する心理教育的援助サービスの試み

河地(2005)は,首都圏の大学生に行ったアンケート調査とインタビュー調査により,「将来を考えて充実した学生生活を送ろうとしながら,迷いや不安の中で前進できずにいる学生の姿」が見えてきたことを指摘している。これに依拠し,大学生に対して心理教育的援助サービスを行った担任としての指導について報告する。具体的には,授業の改善や個別面接,関係者間の連携等を行い,学生にはアンケートや聞き取り調査を実施した。

E7
新 彩子(跡見学園女子大学大学院)・山口 豊一(跡見学園女子大学)
女子大学生における拒食の心理的プロセス

厚生労働省(2014)の国民健康・栄養調査報告では,BMI値が18.5未満の女性の割合が15-19歳では29.5%,20-29歳では21.8%と報告されており,この結果は他の年代の女性と比べて高いものである。また,田崎(2006)は痩身願望が食の問題行動,更には摂食障害を引き起こす主要な要因であることは間違いないと述べている。だが,これまで痩身願望の心理的過程研究はほとんどない。したがって本研究では,ダイエット経験のある女子大学生4名に半構造化インタビューを行い,M-GTAを用いて分析を行った。

【Fグループ】(いじめ・不登校)

F1
西山 久子(福岡教育大学)
不登校傾向のある生徒とその環境への多面的支援
個別と集団へのガイダンスカリキュラムをふまえた心理教育的援助事例の再検討から

私立高校で高校1年生に対して,専任スクールカウンセラーらが相談室におけるピア・サポートを中心とした個別援助を調整し,同時に所属先学級における一次的援助サービスとしてのピア・サポートトレーニングを行った。成果について,ガイダンスプログラムの視点から再検討を行った。個別のピア・サポートの結果からは,青年期の生徒間での支援関係の難しさが示唆された。また,学級単位の心理教育的援助活動では,定着化の難しさが示された。

F2
野口 智世(三重大学大学院)
担任教師による不登校児童の母親へのサポート
母子関係の改善に焦点をあてて

小学校の学級担任として、不登校児童に対して三次的援助サービスおよび保護者へのサポートを行った。本事例では、児童が不登校になった原因の一つとして、母子関係の悪化が考えられたため、児童への援助サービスと同時に、母親との面接を定期的に行った。母親との面接の中で、児童のよい部分を伝えたり、児童への援助案を共に考えたりすることで、母親の児童に対する意識が変化し、それに伴って、児童自身にも変容が見られた。

F3
藤井 茂子(筑波大学大学院)・石隈 利紀(筑波大学)
不登校の小学生の学校の援助プロセス
母子保健室登校による援助に着目して

不登校の子どもへの学校での援助の一つに保健室登校があるが,保健室登校の経過の中に母子保健室登校が生じることもある。小学生の不登校事例では,母子間の愛着関係の確立や母親の養育態度の変容が子どもの分離不安を解消し,教室復帰に影響することが考えられる。そこで,母子保健室登校をした結果,子どもが教室復帰した5事例について,子ども,母子関係の変容や学校の援助を明らかにした。

F4
五十嵐 哲也(愛知教育大学)
小学生の学級編成前後における学級生活満足感の変化と不登校傾向

学級編成前後の学級生活満足感が,新学級における不登校傾向に関連するかを検討した。その結果,学級編成後の「なんとなく登校したくない」傾向や「遊びを優先させたい」傾向は,新学級における承認感の低さだけでなく,新旧双方の学級における被侵害感の高さにも関与していた。一方,学級編成後の心理的な不調を伴う不登校傾向は,新旧いずれの学級においても承認感が低く被侵害感が高いことに関与していることが示された。

F5
能村 由希乃(名古屋大学大学院)・瀬戸 美奈子(三重大学教育学部)
中学生の仲間集団における排他性について
コンピテンスと規範意識との関連から

本研究の目的は、中学生の仲間集団内における排他性とコンピテンス及び規範意識との関連を検討することであった。中学1年生294名を対象にコンピテンス尺度、社会的責任目標尺度、仲間集団指向性尺度、独自に作成した仲間集団内排他性尺度の4つの質問紙を実施した。その結果、仲間集団の中でも特定の者とは親しくしたくないという気持ちは女子より男子の方が高いことが示された。またコンピテンスの高低によって排他感情に相違が認められることや、規範意識と仲間集団内における排他性との関連が示された。

F6
栗本 顕(東京成徳大学大学院)・田村 節子(東京成徳大学)
いじめにおける被害者が加害者へと変わる理由
―大学生への回顧法を用いたイメージをもとに―

近年,いじめに関わる児童・生徒の自殺問題が衆目を集め,教育分野のみならず社会的にも深刻な問題として認識されるようになった。文部科学省(2013)によるといじめ認知数は合計198,108件と前年度の約2.5倍となっており,認知されていないものもあることが予測され、いじめの件数はさらに多いことが考えられる。  そこで本研究では,いじめの被害者が加害者へと変わる理由について大学生を対象に回顧法を用いたイメージを質問紙で得られた自由記述を分析し,いじめの連鎖を止める手掛かりを見つけることを目的とする。

F7
山本 獎(岩手大学)
不登校状態に応じた教師による支援方法
-校種の特徴を明らかにするための再分析-

山本(2007)は不登校児童生徒の状態を「自己主張」「行動生活」「強迫傾向」「身体症状」の4観点で捉え,11の支援方法との適用関係を報告している。しかしそこでは小中高の校種の特徴が検討されていないために,学校場面での活用に限界があるとの課題があった。そこで本研究ではその適用関係を,校種別に明らかにすることにした。原研究との比較を容易にするために,2004年に実施された原研究の調査結果を再分析した。

【Gグループ】(ソーシャルスキル・学級適応)

G1
鈴木 伸子(愛知教育大学)・五十嵐 哲也(愛知教育大学)・坪井 裕子(人間環境大学 人間環境学部)・野村 あすか(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)・松本 真理子(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)・森田 美弥子(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)
小学生の対人葛藤解決方略と学校生活スキル

本研究では,小学生の対人葛藤解決方略と学校生活スキルとの関連を検討した。小学4~6年生児童計2,481名を対象に質問紙調査を行ったところ,解決方略とスキルの獲得状況には関連がみられ,対話による解決方略や非言語的攻撃および非言語的退去による解決方略を用いる程度は,スキルの獲得状況によって異なることが示唆された。小学生の対人葛藤解決の力を高める上で,学校生活スキルの育成の重要性が示されたといえよう。

G2
坪井 裕子(人間環境大学)・鈴木 伸子(愛知教育大学)・五十嵐 哲也(愛知教育大学 教育学部)・松本 真理子(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)・森田 美弥子(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻)
児童養護施設入所児童の学校生活スキルの特徴

本研究の目的は,児童養護施設入所児童の学校生活スキルの特徴を明らかにすることである。小学校4~6年生121名(一般児85名・施設入所児36名)を対象として学校生活スキル尺度(山口ら,2005)を用いた調査を実施した。一般群と施設群の比較を行ったところ,集団活動スキルや自己学習スキルにおいて,施設群は一般群より有意に得点が低かった。施設入所児の学校生活での行動面と学習面の課題が示されたといえる。

G3
藤原 正光(文教大学)・成田悠都子(埼玉県三郷市立幸房小学校)
小学校の学習生活・学校適応感が学校享受感に及ぼす影響

小学生(3年:75名,6年生76名)を対象に,学級の雰囲気,友好関係,授業への意欲,給食の時間,休み時間などの要因が学校享受感に及ぼす効果を検討した。パス解析の結果,1)友だちから褒められることは,学校享受感と密接に関係している。2)教師の授業への熱心な取り組み,分かりやすい授業は,登校意欲と強く結びついていることが示された。

G4
古田 伸子(磐田市立豊岡中学校)・五十嵐 哲也(愛知教育大学)
学級担任が抱く信頼感の状態からみた生徒への指導行動と生徒の学校適応感との関連

個々の教師がパーソナリティの一部として抱く「信頼感」が,実際の生徒への指導行動を通して,生徒の学校適応感にどのように関連するかを検討するため,中学校の学級担任とその学級に所属する生徒に対して調査を行った。その結果,「自他への信頼」が低い群の学級担任が「距離をおく指導」「尊重する指導」を行うことは,その学級の生徒の「学校において課題や目的があることによる充実感」を低下させることを示した。

G5
山下 陽平(愛知県教育委員会)・相澤 亮雄(北九州市教育委員会)・窪田 由紀(名古屋大学大学院 教育発達科学研究科)・梶原 律子(九州産業大学 臨床心理センター)・張 彩虹(福原学園 保健センター)
学校臨床におけるSSTプログラムの内容分析1
実施目的、対象、実施者、演習内容、効果検証方法に着目して

本研究では、学校臨床における心理教育プログラムのうち、ソーシャルスキルトレーニングを取り扱った論文の中で要件を満たす42件を対象に、実施目的、対象、実施者、演習内容、効果検証方法に着目した分析を行った。その結果、実施目的としては、ただ単にソーシャルスキルの獲得に焦点を掲げたものと、それを前提としながらもその結果として仲間関係の構築や社会的適応の改善等に焦点を当てているものに分かれることが明らかになった。

G6
梶原 律子(九州産業大学)・山下 陽平(愛知県教育委員会)・相澤 亮雄(北九州市教育委員会 指導部指導第二課)・窪田 由紀(名古屋大学大学院 教育発達科学研究科)・張 彩虹(福原学園 保健センター)
学校臨床におけるSSTプログラムの内容分析2
実施目的「ソーシャルスキルの獲得・維持・定着」と演習の対応関係に着目して

本研究では、学校臨床におけるソーシャルスキルトレーニングを取り扱った論文の中で要件を満たす42件を対象に、実施目的と演習の対応関係に着目した分析を行った。ここでは実施目的が「ソーシャルスキルの獲得・維持・定着」とされたものを取り上げたが、単に「ソーシャルスキルの獲得・維持・定着」と実施目的で挙げていても、学級のニーズ等に合わせて異なる標的スキルが選択され、演習内容も多岐にわたっていることが明らかになった。

G7
相澤 亮雄(北九州市教育委員会)山下 陽平(愛知県教育委員会)・窪田 由紀(名古屋大学大学院 教育発達科学研究科)・梶原 律子(九州産業大学大学院 臨床心理センター)・張 彩虹(福原学園 保健センター)
学校臨床におけるSSTプログラムの内容分析3
~実施目的「学校・学級生活の安定」「心身の安定・成長促進」と演習の対応関係に着目して~

本研究では、学校臨床におけるソーシャルスキルトレーニングを取り扱った論文の中で要件を満たす42件を対象に、実施目的と演習の対応関係に着目した分析を行った。ここでは実施目的として「学校・学級生活の安定」「心身の安定・成長促進」を掲げたものを取りあげた。その結果、対人関係に関する演習内容が多くなされており、その中でも対人関係の開始、対人関係の維持を目的とした演習内容が多かったことが明らかになった。。

【Hグループ】(ストレス・メンタルヘルス)

H1
市川 麗(跡見学園女子大学大学院)・山口豊一(跡見学園女子大学)
放課後子ども教室に通う児童のこども教室享受感に関する研究

子ども教室の数は年々増加しており、子ども教室で過ごす児童のメンタルヘルスや集団適応に関する研究は喫緊の課題である。そこで、本研究では、児童の子ども教室享受感及びメンタルヘルスの実態を明らかにすることを目的とする。

H2
茂呂 輝夫(茨城県立結城第二高等学校)
小学校長期自然体験活動と生きる力の関連性
1週間の時系列及びストレスの観点における分析

本研究では小学校長期自然体験活動の参加者が実際に「生きる力」の向上が見られたのか,同時にストレスに関する検討を行った。その結果,「生きる力」については,1日目を基準として3日目以降~最終日まで有意な向上が見られた。「心理的社会的能力」,「徳育的能力」,「身体的能力」の上位尺度に関しても,同様で3日目以降~最終日まで有意な向上が見られた。一方,ストレス全体得点においては,事前に対して1ヵ月後に有意な下降が見られた。同様に抑うつ不安感情においても事前に対して1ヵ月後に有意な下降が見られた。

H3
江角 周子(筑波大学大学院)・庄司 一子(筑波大学)
中学校におけるピア・サポート研修の効果に関する量的・質的検討

首都圏公立中学校A校において、仲間同士の支援関係の構築を目指したピア・サポート活動の事前研修を実施した。対象は中学1年から3年の30名であり、内容は研修に先立って実施した、各学級担任および中学生への学級の雰囲気に関する質問紙調査結果を基に「話を聴くこと」を中心とした。事前事後における質問紙調査により量的に、また、研修における感情・認知・行動の3側面からの振り返りの記述により質的に実践の効果を検討する。

H4
早貸 千代子(筑波大学付属駒場中・高等学校)・加藤 勇之助(大阪体育大学)・横尾 智治(筑波大学付属駒場中・高等学校)・石隈 利紀(筑波大学)
起立性調節障害を抱えながら過ごした生徒の6年間の心の成長 
~思春期のおける発達課題とその成長過程~

起立性調節障害(以下、OD)を抱えながらも卒業・現役大学合格をした卒業生へ、在学中の経験やその時の思い等の振り返りインタビューを実施した。インタビューで語られた言葉から、中高6年間でOD と向き合いながら取り組んできた課題とその取り組みの変化が見られ、課題に取り組む際には多く資源(自助資源・援助資源)が活用されていたことが明らかとなった。
今回は資源の活用と心の成長について検討し、ここで報告する。

H5
雪田 彩子(東京成徳大学大学院)・飯田 順子(筑波大学)・西村 昭徳(東京成徳大学)
ストレス過程における自己分化度とコーピングとの関係の検討

本研究では、自己分化度とストレス反応の関係における適応的コーピングの緩衝効果について検討することを目的とし、大学生234名を対象に質問紙調査を実施した。その結果、自己分化度の低群においてコーピングがストレス反応に影響を与え、高群においては影響がみられず、自己分化度による緩衝効果が示された。このことから、自己分化度の低い人は適応的コーピングを用いることでストレス反応を低減しうることが示唆された。

H6
森山 賢一(玉川大学教育学部)・柏 賴英(茨城県学校教育相談研究会)
思春期におけるアンビバレンスへの対応の具体的教育実践
-Everything happens for the Best.-

思春期の子どもが母親にべったり甘えるかと思うと次の瞬間には「ウルサイ」と拒絶的態度で接してくることがある。同一の人物又は対象に対して愛情と憎しみ、尊敬と軽蔑、反抗と従順などのように正反対の感情を同時に表わすことをアンビバレンスといい両面感情、両面性などと訳されている。人間の心の複雑さ、一筋縄ではいかない人の心の不思議な構造に気付かないとアンビバレントな感情を向けられた親や教師は戸惑うばかりでなく恩を仇で返されたような気持ちになる。私が経験した実例を述べ対応の在り方を共に考えていきたい。

H7
柏 賴英(茨城県学校教育相談研究会)・森山 賢一(玉川大学教育学部)
不快に感じるストレスにどうつきあうか
-Think Globlly Act Locally-

現代社会はストレスの渦中。町内のこと、学校のこと、人間関係、あるいは家庭内の問題、生態系の問題で悩んでいる。人はただ生きているだけで何らかのを感じている。なくすことのできないストレスと私たちはどうつきあっていけばいいのか。そのためにはストレスとなかよくする生き方が大切とし以下5点に絞って述べ、ご助言をいただきたい。①生態系サービスへの感謝の気持ちの共有②リズムと運動とグルーミング③抗重力筋に働きかけ首と背筋をピシッと(心も体も若々しく)④交感神経と副交感神経のバランス⑤平常心の維持など)

【Iグループ】(動機づけ・自己肯定感)

I1
四辻 伸吾(大阪教育大学附属平野小学校)・水野 治久(大阪教育大学)
小学校高学年児童の自己成長意欲についての研究

本研究では小学校高学年児童が自分自身についてどのようなことを成長させたいかについて明らかにする自己成長意欲尺度を作成した。因子分析の結果、自己成長意欲尺度は<生活力成長意欲>、<学力成長意欲>の2因子が抽出された。これを受け、自己成長意欲を高めるため、小学生5年生児童120名に対して、教育実習生との関わりから自分の生活力を高めようとする取り組みと、テストに向けて毎日の学習について考える取り組みを行った。その結果、<生活力成長意欲>、<学力成長意欲>ともに有意に高められた。

I2
大矢 優花(愛知医科大学病院)・松本 真理子(名古屋大学)
気になる児童生徒の自己イメージ
―イメージ連想法(IAM)を用いて―

本研究では,気になる児童生徒が抱く自己イメージについて検討した。小学4年483名と中学2年585名の計1068名を対象に,イメージ連想法を用いて,「わたし」という言葉を見て思いつくことを書くよう教示した。担任には「気になる子チェックリスト」を実施した。その結果,中2の気になる生徒において,無気力,低い自尊感情や自己否定を示す記述が特徴的であるなど,学年と性による特徴や一般児との差異が認められた。

I3
野村 あすか(名古屋大学)・坪井 裕子(人間環境大学)・鈴木 伸子(愛知教育大学 学校教育講座)・垣内 圭子(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)・大矢 優花(愛知医科大学病院 精神神経科)・松本 真理子(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)・森田 美弥子(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)
文章完成法から見た小・中学生の家族関係とQOLとの関連

本研究では,小学校4年生,6年生と中学校2年生計1,087名を対象として,文章完成法(以下,SCT)を通して把握される家族関係とQOL質問紙との関連を検討することを目的とした。SCTの反応文は感情的側面のカテゴリーに沿って分類した。総じて,反応文に家族への肯定的感情が伴う場合はQOL総得点や下位領域の得点が高く,否定的感情が伴う場合は得点が低かったが,学年や性別による差異も認められた。

I4
中井 大介(愛知教育大学)
中学生の教師ステレオタイプと教師関係への動機づけの関連

本研究では,生徒の教師関係への動機づけがどのような要因によって規定されているかを検討するため,中学生の教師ステレオタイプと教師関係への動機づけの関連を検討した。各変数の相関係数を考慮した仮説モデルを構成し,学年別,性別の多母集団同時分析を行った。その結果,過去の経験や周囲の情報から形成された教師ステレオタイプが,教師関係全般への動機づけに影響を及ぼしていることが明らかになった。

I5
石津 憲一郎(富山大学人間発達科学部)・下田 芳幸(富山大学人間発達科学部)
中学生における随伴性自己価値と自尊感情
―怒りの処理の視点から―

本研究では,高(低)自尊感情者と高(低)随伴性自己価値者の怒り処理のプロセスを検討することを目的とした。自尊感情が高い者は適切な怒りの処理を行うと考えられるが,怒り処理への影響力は,随伴性自己価値によっても影響を受けた。すなわち,自尊感情が高く随伴性自己価値が高い者は「怒りのコントロール」が高いが,同じ自尊感情が高く随伴性自己価値が低い者は,「怒りのコントロール」が低いことが示された。

I6
品川 紀久子(志摩市立大王中学校)
自己肯定感を育む学級活動の実践から

中学生の時期は自分に対する肯定的な意識を持てず、周りとの比較により自己の価値を確認しようとしがちである。そこで自己理解を深める学級活動での授業実践を通して、自分の「よさ」を知り、それを伸ばしていこうとする態度を育てることで、自己を肯定的にとらえなおす機会を作る。中学1年生を対象とした授業実践と生徒の自己肯定感の変化との関連から、集団の中で自己意識を育てる授業のあり方について検討したい。

【Jグループ】(学校危機)

J1
竹川 佳津子(加須市スクールカウンセラー)
「東日本大震災による避難児童への学校における取り組み」
スクールカウンセラーを中心に

東日本大震災に伴う原発事故により集団で避難し、転入してきた児童に対して行ったスクールカウンセラー(以下SC)の活動について報告する。最初に児童の状況を把握するために行った半構造化面接、その中で出てきた児童の訴えから始まったグループワーク、相談を希望した児童におこなったカウンセリングが活動の3本柱である。本研究ではSCの活動によって明らかになったこと、さらにSCの活動の意義について検討を行いたい。

J2
西井 香純(名古屋大学)・椙浦 結香(名古屋大学)・垣内 圭子(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)・野村 あすか(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)・坪井 裕子(人間環境大学 人間環境学部)・森田 美弥子(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)・松本 真理子(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)・窪田 由紀(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)
心の減災心理教育プログラムの効果に関する研究(1)
―プログラム概要と効果測定調査の自由記述概要―

われわれは,2012年から心の減災心理教育プログラムの開発に取り組んでおり,これまでに年3回実施版のプログラム開発を行った。本発表では,プログラム概要と試行授業後の効果測定調査における自由記述概要を報告する。効果測定調査の対象は,小学校5,6年生の児童278名で,そのうち260名(93.5%)に自由記述欄の記載があった。自由記述についてKJ法により分析を行った結果,プログラムの有効性が示された。

J3
椙浦 結香(名古屋大学)西井 香純(名古屋大学)・垣内 圭子(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)・ 野村 あすか(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)・坪井 裕子(人間環境大学 人間環境学部)・森田 美弥子(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)・松本 真理子(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)・窪田 由紀(名古屋大学 大学院教育発達科学研究科)
心の減災心理教育プログラムの効果に関する研究(2)
―効果測定調査の自由記述分析―

本発表では,心の減災教育プログラムにおける成果を把握するために,効果測定調査を実施した。授業を受けての自由記述欄に回答した小学校 5,6 年生の児童 260 名分のデータを分析した。その結果,【10 秒呼吸法】,【ふわふわ言葉】,【信頼・協力・助け合い】という3 回のプログラム内容に沿ったカテゴリーに分類され,さらに詳細な質的分析を行ったところ,各心理教育授業が児童にとって有効であったことを示唆する結果が得られた。

J4
吉田 惠子(高崎健康福祉大学)
体罰判例から見る学校心理士の役割
PTSDと保護者対応

教師が児童生徒に対して行う有形力の行使は、時として児童生徒にPTSDや保護者から学校教師へのクレーム・トラブルを引き起こし、訴訟へと発展する例もある。本発表は、教育的指導の範囲での教師の有形力の行使から生じた児童のPTSDと、それをめぐる保護者と学校とのトラブルを、裁判例を素材に検討し、初期対応における学校心理士の役割について論じるものである。

J5
和田 浩平(医療法人仁精会 三河病院)・窪田 由紀(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)・石川 雅健(愛知学院大学 教養部(心理学教室))・丸山 笑里佳(岡崎女子短期大学 幼児教育学科)・大野 志保(愛知教育大学附属高等学校)・成田 絵吏(名古屋大学 教育発達科学研究科 心理発達科学専攻)・山中 大貴(名古屋大学大学院教育発達科学研究科 心理発達科学専攻)・林 亜希恵(名古屋大学大学院教育発達研究科 心理発達科学専攻)
児童の死亡事故を体験した学校への支援の在り方についての検討
~複線径路・等至性モデル(TEM)を用いた臨床心理士の語りの分析から~

本研究は,児童の事故死を経験した学校への支援について,緊急支援チームの一員として支援に入った臨床心理士の視点からまとめたものである。事故4年後に半構造化面接を実施し,TEMを用いて分析した。その結果,的確な指示を出せるリーダーの存在や充実した支援体制が個々人の安心感につながること,日頃から落ち着きのない児童への初期対応の重要性が語られた。一方で,危機的状況が教員間の団結を促す契機となり得ることが示唆された。